米NASA、アルテミスIの打ち上げ延期 エンジンに問題

NASAの月探査計画「アルテミスI」のロケット打ち上げが延期になった/John Raoux/AP

2022.08.30 Tue posted at 10:21 JST

米フロリダ州ケネディ宇宙センター(CNN) 29日に予定されていた米航空宇宙局(NASA)の歴史的な月探査計画「アルテミスI」のロケット打ち上げが延期になった。4つのエンジンの一つに問題が生じ、打ち上げチームが対応できなかった。

ミッションの責任者、マイク・サラフィン氏は記者会見で「(今後の)選択肢がどのようなものになるか語るには時期尚早」として、情報やデータを収集する時間が必要だと説明した。「9回まで試合をするつもりだ。まだあきらめない」とも語った。

新型ロケット「SLS」と宇宙船「オリオン」を打ち上げ可能な次のタイミングは9月2日で、その後は5日となる。2日に実施できるかは試験の結果次第となる。

NASAは「コアステージ下部にあるRS25エンジンを打ち上げに適した温度範囲に収めるブリードテストがうまくいかず、2時間の発射可能時間を使い切った」と述べ、管制官が原因を評価中とした。

サラフィン氏によると、打ち上げチームはブリードテストが事前のシミュレーションを行う「ウェット・ドレス・リハーサル」に含まれておらず、リスクがあることを認識していた。

現時点で、問題はエンジン自体ではなく、エンジンの冷却に利用するブリードシステム内部にあったとみられている。

サラフィン氏は「エンジン始動時に内部を流れる冷たい燃料にショックを受けないようにエンジンを低温にする必要がある。評価には少し時間がかかる」と述べた。

現時点で、エンジンの冷却に利用するシステム内部に問題があったとみられている

内部タンクの通気弁にも問題が発生し、こうした一連の問題から対応には時間が必要との結論に達した。打ち上げ時には降雨や落雷もあり、天候が原因で打ち上げ中止となった可能性もあった。

大きな修繕が必要な場合、対応に多くの時間を要したり、ロケットをケネディ宇宙センター内の建物に戻したりする可能性がある。建物に戻すには3日半かかる。

打ち上げチームはデータを収集し対応方法を見極めるため、ロケットを現在の設定のまま維持する。NASAの関係者によると、SLS、オリオンとも状態は安定している。

打ち上げを見ようとハリス副大統領夫妻が現地を訪問。延期が発表された後「こうした試みは貴重なデータを提供してくれる」「我々のアルテミス計画への姿勢は揺るがず、我々は月に戻る」などとツイートした。

NASAのネルソン長官も「適切な状態になるまで打ち上げをしない」と述べた。宇宙飛行士としてスペースシャトルの24回目の飛行に参加した同氏は、4回の打ち上げ延期の後の5回目でフライトを完遂した経験がある。「延期したどれか一つの回で打ち上げを行っていたら、いい日にはならなかったかもしれない」とも言い添えた。

打ち上げが成功すれば、オリオンは月に向かい、月を周遊後に地球に帰還する。42日間での飛行距離は210万キロに達し、サンディエゴ沖の太平洋に着水予定。今回は有人飛行ではなく、3体のマネキンとスヌーピーのぬいぐるみが搭乗し、宇宙放射線の被ばく量の計測などを行う。

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