トランプ氏が司法省にかけた圧力、元同省幹部が証言 米議会襲撃の公聴会ポイント

トランプ氏が司法省にかけた圧力について、元同省幹部が証言した/Jan 6 Committee

2022.06.24 Fri posted at 18:45 JST

(CNN) 昨年1月6日の米連邦議会議事堂襲撃事件を調査する下院特別委員会の公聴会5日目が23日に開かれ、トランプ前大統領が2020年大統領選の結果を覆して権力の座にとどまろうと、任期終了間際に司法省を武器として利用しようとしていたとの証言が集まった。

公聴会直前にはトランプ氏のスキームにかかわった司法省の重要人物、ジェフリー・クラーク氏の自宅に強制捜査が入った。同氏は不正行為を否定している。

公聴会ではトランプ氏が任命した3人の当局者が証言し、これまで参加した共和党員の証人の列に加わった。証言したのはローゼン元司法長官代行、ドノヒュー元副司法長官代行、司法省法務顧問室を率いていたスティーブン・エンゲル氏。

以下、公聴会のポイントをまとめた。

恩赦を求めた共和党議員

公聴会では、共和党の連邦議会議員が選挙結果を覆すトランプ氏の取り組みを支援するために果たした役割や、そうした議員の多くが1月6日の後に恩赦を求めていた様子が明らかになった。

特にスコット・ペリー下院議員(ペンシルベニア州選出)が、司法省のジェフリー・クラーク氏とホワイトハウスをつないだ人物としてクローズアップされた。

トランプ大統領の元首席補佐官マーク・メドウズ氏の側近を務めたカシディー・ハチンソン氏は録画された証言の中で、ペリー氏について「彼はジェフ・クラーク氏に司法省を率いてほしいと願っていた」と語った。

委員会はペリー氏やモー・ブルックス下院議員(アラバマ州選出)、マット・ゲーツ下院議員(フロリダ州選出)などが恩赦を求めていた様子についても、新たな情報を提示した。

委員会によれば、ブルックス氏は21年1月にホワイトハウスに送った電子メールで、「大統領からこの手紙を送るように頼まれた。マット・ゲーツ氏からの要請もあった」「大統領が以下のグループの人々に全般的な(全目的の)恩赦を与えることを勧める」と記述。メールにはアリゾナ州とペンシルベニア州の選挙人団の投票提出を拒否した議員全員の名前が記載されていたという。

23日の公聴会は共和党のアダム・キンジンガー委員(イリノイ州選出)が主導した。同氏は特別委員会での役職が原因で自党の会議で仲間はずれの憂き目にあっている。

キンジンガー氏は公聴会で恩赦の論点に進む前に、「私の仲間も議会で宣誓をしたが、その一部は宣誓を守らず、大きなうそを広める道を選んだ」と語った。キンジンガー氏はこの任期限りで下院議員を辞める予定。

証人らはトランプ氏が自分の主張を正当化するために用いた手法を明確に説明した

大統領執務室での20年12月の会議

公聴会では、20年12月にホワイトハウスの大統領執務室で開かれた会議にも焦点が当てられた。そこでトランプ氏は、ローゼン司法長官代行を更迭して、クラーク氏を後任に据えることを考えていた。クラーク氏は連邦政府の権限を使って、州の議員にトランプ氏敗北の結果を覆させる取り組みを進めたい意向を示していた。

こうした経緯は既に広く知られていたが、23日の公聴会では、その会議に出席していた当局者本人が生で証言する機会となった。

ホワイトハウスの弁護士、エリック・ハーシュマン氏は、会議でクラーク氏が何度も酷評され、自身もクラーク氏を「くそったれ」と呼んだと語った。クラーク氏が示した、激戦州に書簡を送る計画も「気が狂っている」と断じたという。

ドノヒュー氏は事前に録画された証言の中で、司法長官を務めるにはクラーク氏が力不足だと会議中に指摘したと述べた。クラーク氏の計画を「不可能」で「ばかげている」と切り捨て、ホワイトハウスの法律顧問パット・シポローネ氏も同計画を「無理心中の協定」だと批判していたことを明らかにした。

ローゼン、ドノヒュー、ハーシュマン、シポローネ各氏が押し返したことで、トランプ氏はクラーク氏の計画を採用しなかった。もし計画に従っていたら、米国が未知の領域へ踏み込み、トランプ氏のクーデターの試みが成功する確率が上がっていただろう。

イタリアの衛星に投票機の押収、ホワイトハウスが推進した陰謀論

トランプ氏は自分の主張を正当化するために、連邦政府のあらゆる手段を使おうとしていた。公聴会に出席した3人の証人は全員、それを明確に説明した。

3人によれば、政権最高レベルの当局者が、インターネットの片隅にあった陰謀論の調査を迫られていた。トランプ氏は、不正投票が広まっていたという根拠のない主張を正当化しようと躍起だった。

当時のミラー国防長官はホワイトハウスの要請で、イタリアの衛星が投票結果をトランプ氏からバイデン氏に変えたという陰謀論を調査するため、イタリアの国防相に連絡した。

自身もこうした陰謀論の調査を求められたドノヒュー氏は、陰謀論を「完全に狂っている」と断じた。CNNは以前、メドウズ首席補佐官が国防幹部にこの陰謀論の調査を求めていたと報じている。

証人らは、トランプ氏本人が自分たちや国土安全保障省の幹部に対して、州政府から投票機を押収するように求めてきたとも語った。前例のない措置だがその根拠は示されなかった。

ローゼン氏によると、司法省の当局者がトランプ氏に、国土安全保障省は投票機に関して専門性を有するが、押収を正当化できるものは何も見つからないと伝えたところ、トランプ氏は秘書にバージニア州の州務長官に電話するように叫んだという。

ローゼン氏は、国土安全保障省が投票機を押収できると自分からトランプ氏に伝えたことは一度もないとも証言した。

CNNは以前、トランプ氏の側近が軍や国土安全保障省に投票機を押収させる大統領命令を起草していたと報じた。トランプ氏は最終的にそれに署名することはなかった。

公聴会直前に自宅に強制捜査が入ったジェフリー・クラーク氏

以前よりトーンダウンしたが、トランプ氏からの圧力を如実に描いた証人

23日の公聴会は、感情のこもった証言や衝撃的な映像が目立ったこれまでの公聴会とは趣が変わった。元司法省の法曹関係者3人は、同省やホワイトハウスでの背後の動きを説明し、それはトランプ氏の取り組みの幅広さを理解するのに欠かせない内容だった。

トランプ氏が権力の座に残るために自分たちを呼び出した際に発言した内容や、同氏の指示を拒否した後自分たちが更迭されそうになった様子が詳しく述べられた。

証人はホワイトハウスでの会議やトランプ氏との電話を再現し、手書きのメモを詳しく分析することを要請された。それは公聴会というより刑事裁判で見られるような光景だった。

語られた内容は1年以上前から知られていたものが多かった。それでも、現職大統領が自分の政治運動の支援に連邦権力を使おうとする点が焦点となったことから、公聴会全体はニクソン時代の記憶を呼び起こすものとなった。

クラーク氏自宅に強制捜査

公聴会の前には、連邦捜査官がバージニア州北部にあるクラーク氏の自宅の強制捜査に入った。議員らは不意を突かれた様子だった。

捜査自体は22日に行われたが、報道は23日午前にあった。捜査を主導した政府機関や捜査の要因、捜査対象は現時点で不明。

ただ、連邦捜査官がこうした対応をとったこと自体が重要な意味を持つ。委員会は今回の公聴会で、クラーク氏の存在を証言を通じて国民に周知させたいという期待があった。この捜査で、委員会の望みは実現できたようにみえる。

トランプ氏が司法省にかけた圧力、元同省幹部が証言

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