(CNN) ウクライナ東部リシチャンスク市の防衛がさらに危うくなってきた。同市はルハンスク州でウクライナ側が維持する最後の都市となっている。
この数週間、ロシア軍は同市の南と東にあるウクライナ軍の防衛陣地を徹底的に破壊しようとしてきた。同市を守るウクライナ軍を包囲し、孤立させるのが狙いだ。
ロシア軍はこの2、3日で、ウクライナ軍からの砲撃で被害を受けながらも、リシチャンスク南郊の複数の村に入った。ウクライナ軍によれば、ロシア軍の大隊戦術グループが戦闘能力回復のために統合されるか、撤退する動きが見られるという。
米シンクタンクの戦争研究所が行う日次の戦況分析によると、ロシア軍が南方から突破した場合、難関となっているドネツ川を渡ることなく、この数日中にリシチャンスクを脅かせる状況になる可能性がある。
22日にウクライナ当局が失ったと認めた村落はすべて、ドネツ川の西岸、リシチャンスクの南から10キロ圏内にある。
ルハンスク州軍政トップのセルヒ・ハイダイ氏は「ロシア軍がリシチャンスクに近づき、近隣の町に進攻している。リシチャンスクは航空機からの砲撃を受けている」と語った。
さらに同市南方の戦況は「難しい」と認め、「敵はトシキフカに入り、他の村落への砲撃を増やせるようになった」とも述べた。ロシア軍は市のすぐ南の村々にも入り、「我々の兵士が防衛を維持するのは容易ではない」としている。
ロシア軍は作戦中一貫して、領土を奪う前に集中的な爆撃を行う戦術をとっている。ハイダイ氏の発言から見えるのは、リシチャンスク周辺の防衛隊が数週間にわたる爆撃を受けた後、ロシア軍の圧倒的な火力の前に屈し始めている状況だ。
ウクライナ軍は今でも、リシチャンスク郊外や周辺の村で戦いを続け、高台にある地の利を生かしている。
それでも、既に悪化している供給線はさらに脆弱(ぜいじゃく)になりつつあり、ロシア軍のばく大な火力に防衛陣地は苦しんでいる。
数週間にわたる決然とした抵抗の後、この数日で起きているこうした流れの逆転は、今がウクライナ軍にとって南部マリウポリの兵士投降後最も厳しい1週間になっていることを示している。
ロシア軍はリシチャンスク近郊での攻撃に加え、同市から西方のバフムートへと伸びる高速道路を寸断しようとしている。この道路はウクライナ軍にとって決定的に重要な連絡線だが、一部地域では道路から数キロ以内にまでロシア軍が近づいている。
リシチャンスクと隣のセベロドネツクを守るウクライナ軍が大量のロシア軍部隊の火力を引きつけていることで、隣接するドネツク州でのロシア軍の進撃姿勢は停滞している。それでも、ロシアはここから近いロシア南西部の予備役召集の手を打つことも可能だ。一方、ウクライナ軍の最良の部隊の一部は、数カ月に及ぶミサイルやロケット、砲撃、空爆を受けて戦力を大きく消耗している状況にある。
ウクライナ側がリシチャンスク周辺に塹壕(ざんごう)を掘って守ると決意すれば、ロシア軍がそこを奪うには相当な取り組みが必要となる。数週間に及ぶ可能性もあるだろう。ただ、その頃には、リシチャンスクはセベロドネツクやポパスナ、マリウポリと同じように、一部地域が灰じんに帰している可能性がある。
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本稿はCNNのティム・リスター記者の分析記事です。