中国飲食店の女性暴行事件、「被害者に何が起きたのか」 答え求める声強まる

中国飲食店での女性暴行事件を巡り、追加情報がないことを訝る声が広がっている/Reuters

2022.06.21 Tue posted at 12:45 JST

香港(CNN) 中国河北省唐山市の焼き肉店で食事中の女性客4人が襲撃され、国内に衝撃と怒りが広がった事件から10日が経過した。だが、被害者に関する情報は依然皆無で、中国のインターネットでは「あの女性たちに本当は何が起きたのか」との疑問の声が絶えない。

事件では女性の1人がセクハラを拒んだことを受け、女性のグループが男9人から激しい暴行を受けた。

監視カメラが捉えた襲撃の様子は中国全土に衝撃を与え、長年にわたり嫌がらせやジェンダーに基づく暴力に遭ってきた女性たちの怒りに火を付けた。

だが、被害者やその家族がその後沈黙していることから、女性らの身に最悪の事態が起きたのではないかと心配する声が多く上がっており、普段から不都合なニュースを隠蔽(いんぺい)する統治体制に対する市民の信頼の欠如を浮き彫りにする形となった。

監視カメラの映像には、男らが女性1人の髪をつかんで店外に引きずりだし、瓶や椅子で殴打したうえ、頭部を繰り返し蹴る様子が映っている。助けに入ろうとした女性は押しのけられ、後頭部を階段に激しく打ち付けた。

襲撃の数時間後の写真には、被害者の1人が頭に包帯を巻かれ、血まみれの状態で病院の担架に横たわっている姿が見える。翌日、唐山警察は女性2人が「命に別条のないけが」を負って入院しており、「容体は安定している」と発表した。だがそれ以降、女性らの容体に関する追加の情報は公表されていない。

ネット上では先週、一部の被害者は当局が主張するよりずっと悪い容体だとの噂(うわさ)が絶えなかったものの、警察や病院関係者、国の後押しを受ける女性団体「中華全国婦女連合会」の地元支部はそれを繰り返し否定した。

監視カメラの映像は襲撃の一部しか捉えておらず、カメラに映らない付近の路地で暴力が続いていたとの主張もある。ただ、CNNはこの主張を独自に検証できていない。ネット上には、路地に花束を置く住民の姿を捉えた別の動画も出回っている。

中国版ツイッターの微博(ウェイボー)では、被害者の女性らの近況に関するハッシュタグが17日までに2億回以上閲覧され、22万件以上のコメントが寄せられた。その多くは女性らに何が起きたのか情報を求める内容だった。

ウェイボーは17日の声明で、事件に関する「噂を広めた」として320個のアカウントを閉鎖したことを明らかにした。メッセージアプリ「微信(ウィーチャット)」上で拡散していた、こうした噂に言及した記事も検閲された。

臆測の絶えない状況に拍車をかけたのが、被害者にまつわる情報が全くないことだ。本人も友人も家族も、誰ひとりとして襲撃後に公に発言しておらず、けがの状態に関する正式な詳細も公表されていない。国営メディアの報道は総じて、容疑者を逮捕した警察の素早い対応や、唐山当局が発表した組織犯罪取り締まりキャンペーンに焦点を当てている状況だ。

「中国新聞週刊」などいくつかのメディアは、女性らの死亡を否定する病院関係者の話を報じたものの、それで市民が納得することはなかった。

ウェイボーのあるユーザーは「当局は毎日噂を否定している。証拠はどこにあるのか」と問いかけた。

別のユーザーも「なぜ噂が飛び交うのか。それはどこを見ても、一片の真実も見つけることができないからだ」と指摘した。

地元警察署はCNNの取材に事件はまだ捜査中だと述べ、これ以外の情報は共有しなかった。女性らが治療を受けた病院にもコメントを求めたものの、返答はなかった。中華全国婦女連合会の地元支部は電話を切った。

食事中の女性グループに殴る蹴るの暴行、防犯カメラ映像に憤り噴出

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