気候危機の費用、20年間で9倍超に増加 援助国の支援追い付かずと報告書

気候危機がもたらす災害への対応コストが20年間で9倍以上に膨れ上がっているという/Dong Jianghui/Xinhua/Getty Images

2022.06.10 Fri posted at 08:52 JST

(CNN) 気候危機が急加速する中、異常気象による緊急事態に直面したコミュニティーの支援に必要な金額はこの20年間で800%以上も増加したことが、最新の調査で明らかになった。

7日にオックスファムが公表した報告書によると、異常気象関連の国連人道資金の必要性が20年前よりも急速に高まっているだけでなく、援助国の支援が驚異的な気候危機の費用に追い付いていないことが判明した。

2021年、異常気象災害の経済的負担は全世界で約3290億ドル(現在のレートで約44兆円)にのぼった――これは過去3番目に高い数字で、同じ年に富裕国から貧困国に提供した総支援金のほぼ2倍にあたる。

00~02年、国連は異常気象災害後の人道活動で毎年平均16億ドルの資金が必要とした。19~20年に必要とされた金額は1年あたり平均155億ドル――800%以上も増加した。

さらに気候変動を原因とする災害の対応に必要な資金のうち、援助国から提供されている資金はわずか半分だ。

「気候変動は害を及ぼしている。今後も被害を出し続けるだろう。黒人や先住民、有色人種やその他の脆弱(ぜいじゃく)な地域が真っ先に、もっとも甚大な被害を受けている――生計や文化、医療、生活様式を崩壊させている」。オックスファム・アメリカの気候変動政策上級顧問のラッセル・アームストロング氏はCNNにこう語った。

「気候変動による経済的負担は全世界で推定3000億~5000億ドル、化石燃料への政府の補助金とほぼ同額であるにもかかわらず、解決策を求める声には耳を傾けてもらえない」

17年以降、気候変動の原因を生み出している先進国のうち、こうした国連の人道支援の呼びかけに応じているのは約54%で、330億ドルの赤字が生じている。

気候災害でもっとも甚大な被害を受けるのは、社会インフラの脆弱な中低所得国だ

世界各地で紛争や食料不足対策に追われ、すでに財政的にひっ迫している国連の人道支援体制は気候危機でさらに圧力を受けていると研究者は言う。

気候変動が原因の災害の影響で、国内の物理的・社会的インフラに根付く不平等がさらに悪化している。多くの場合、もっとも痛手を負っているのは低所得国だ。

こうした国々では、災害復興に欠かせない適切なインフラや資金が不足している。

報告書によれば、異常気象災害に関する支援が再三求められる国々には、アフガニスタンやブルキナファソ、ブルンジ、チャド、コンゴ民主共和国、ハイチ、ケニア、ニジェール、ソマリア、南スーダン、ジンバブエなどがある。

一方で米国などの富裕国は、異常気象災害の原因となる二酸化炭素の大部分を排出し続けている。

これまで二酸化炭素をもっとも排出してきた国として、「米国は国際社会に対し、気候変動対策を最優先して異常気象による損壊の費用を肩代わりする義務がある」と、アームストロング氏も述べた。

報告書によれば、国連の人道支援募金では中低所得国のごく一部――推定人口39億人のうち、約4億7400万人――しか賄えない。こうした国々は、今世紀に入って以来ずっと気候変動による災害に悩まされ続けている。

報告書はドイツのボンで開催された気候問題に関する閣僚会合に合わせて公表された。会合では「損失および損害」をテーマに、気候変動でとくに甚大な被害を受けている国々に対する富裕国の資金額を重点に話し合いが行われた。

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