(CNN) オーストラリア西部沿岸の浅瀬に生育する世界最大の植物が見つかったとして、西オーストラリア大学の研究チームが学術誌に論文を発表した。
同大の研究者エリザベス・シンクレア氏によると、「ポシドニア・オーストラリス」と呼ばれるこの海草は、世界遺産に登録された西オーストラリア州中部シャーク湾の保護区に180キロ以上にわたって繁殖している。
これほどの大きさがあるのは、この海草が自らのクローンを作成し、同一の遺伝子をもつ子孫を作り出しているためだという。こうした形の繁殖は動物界ではまれだが、特定の環境条件が整えば起きることがあり、植物や菌類、細菌で起きることが多い。
この論文は5月31日、英王立協会紀要Bに掲載された。
「海草の草原には何種類の植物が生えているのかとよく尋ねられることがある。そこで答えを出すために遺伝子ツールを使用した」とシンクレア氏は説明する。
「その答えは驚きだった。たった1つ! つまり、たった1本の植物が、シャーク湾で180キロにわたって伸び、地球上で最大の植物を形成していた」
シンクレア氏のチームは2012年と19年、シャーク湾の海草草原10カ所でサンプルを採集。深さ、水温、塩分濃度などの環境状態も測定した。
海草サンプルのDNAを解析した結果、これが1本の植物だったことが分かった。
「この海草は庭に生える芝生のように、根茎を伸ばして成長し続けることができる。唯一の違いは、海草の根茎は海底の砂の下にあって見えないこと」とシンクレア氏は解説し、「さらに興味深いことに、染色体の数は、私たちが過去に調査した他の個体の倍もあり、通常の20ではなく40あった」と言い添えた。
海草は世界各地の海岸沿いや河口付近に生育する。
クローンを通じた繁殖は、海草草原が塩分濃度の上昇、強い光、気温の変動といった環境の変化に順応する助けになっていると推定される。
シンクレア氏によると、海草草原はほぼ200平方キロの範囲を覆っており、世界最大の植物とも呼ばれる米ユタ州のアメリカヤマナラシをはるかに上回っていた。
米農務省森林局によると、アメリカヤマナラシはクローンを通じて約0.4平方キロの範囲に広がり、4万本以上の木で構成されている。
シャーク湾の海草の年齢は約4500歳。それでも記録破りではない。地中海西部で発見された全長15キロの海草ポシドニア・オセアニカは、10万歳を超えている可能性がある。
「個々の海草クローンは、生殖ではなく植物性の水平に広がる根茎に依存していることから、そのままにしておけばほぼ永遠に存続する可能性がある」とシンクレア氏は話している。