(CNN) 2300万年以上前に生息し、映画「MEG ザ・モンスター」の題材にもなった巨大ザメのメガロドン。その体長は現在の海に生息するホホジロザメの4倍近くに上る。
だが、2種のサメはかつて同時期に生息していて、捕食する獲物が一部重複していた可能性が高い。この競争が一因となり、体長20メートルのメガロドンは絶滅に追い込まれた可能性があると示唆する新研究が発表された。
この発見にたどり着くため、調査にかかわった研究者は新たな技術を駆使。絶滅したサメ13種と現生のサメ20種の歯に見られる摂取食物の特徴を分析し、「栄養段階」と呼ばれる食物連鎖上の位置を割り出した。
「メガロドンは小説や映画では通常、超巨大で怪物的なサメとして描かれるが、実際はこの絶滅したサメについて我々はまだほとんど何も知らない」。そう語るのは論文を執筆した米デポール大学の古生物学教授、島田賢舟氏だ。
島田氏はメールで「新たな研究の結果、鮮新世初期のホホジロザメの食物の範囲がメガロドンと非常によく似ていることが示された。これは我々のデータが競争仮説と矛盾しないことを示唆している」と指摘した。
研究チームはサメの歯のエナメル質に残る亜鉛の異なる同位体を調べることで、こうした情報を集めることに成功した。
亜鉛は生物にとって不可欠であり、骨の発達において重要な役割を果たす。歯に含まれる亜鉛の重い同位体と軽い同位体の比率には、それぞれのサメが食べていた動物性物質の種類が記録されている。
論文共著者で米ウィリアム・パターソン大学環境科学部の教授を務めるマイケル・グリフィス氏は「食物連鎖の上に行くほど2つの同位体の比率が変わるため、亜鉛の同位体は生態系の指標として使うことできる」と指摘する。
例えば、仮にメガロドンがホホジロザメを食べていた場合、食物連鎖における上位の位置が同位体の記録に反映されるとみられる。だが、今回の研究では2つのサメの間で一部重複がみられ、両種が同じような獲物を食べていたことが示唆されている。
同じ栄養段階での摂食は、メガロドンとホホジロザメが同一の獲物をめぐって直接の競争関係にあったことを必ずしも意味しない。両種がそれぞれ異なる獲物に特化していた可能性もあるためだ。ただ、少なくとも一部の餌が重複していた可能性は高いという。
グリフィス氏は「今日と同様、ホホジロザメは大型魚を食べていた可能性が高い。体がより小さいホホジロザメはメガロドンほど大量の食物を必要としなかった可能性が高く、同様の獲物を餌にしていた場合、ホホジロザメに競争上の優位性があったとみられる」と指摘している。
研究結果は5月31日の科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに掲載された。