クリントン陣営の弁護士、FBIへの虚偽供述問われた裁判で無罪

マイケル・サスマン氏=5月16日、米ワシントンの連邦裁判所/Manuel Balce Ceneta/AP

2022.06.01 Wed posted at 11:55 JST

(CNN) 2016年の米大統領選で民主党ヒラリー・クリントン陣営の弁護士を務めたマイケル・サスマン氏が連邦捜査局(FBI)への虚偽供述の罪に問われた裁判で、首都ワシントンの連邦裁判所の陪審は5月31日、サスマン氏に無罪評決を言い渡した。

トランプ前米大統領とロシアの関係を探る捜査の不正を3年にわたり調べていたジョン・ダーラム特別捜査官率いる司法省チームにとって、大きな敗北となった。ダーラム氏は、サスマン氏が16年のFBIとの会合でトランプ氏とロシアに関する情報提供をした際、虚偽の供述をしたと主張していた。

陪審の評議は2日間、6時間にわたった。

裁判の焦点となった16年9月の会合では、サスマン氏がFBIの法務顧問で友人のジェームズ・ベーカー氏に情報を提供した。これをきっかけに、トランプ氏一族企業のトランプ・オーガニゼーションとロシア政府と関連のあるアルファ銀行の間にインターネット上の裏ルートが存在しないか、4カ月にわたる捜査が始まった。

検察はサスマン氏がベーカー氏に対し、顧客を代理していることを意図的に告げず、単に関係する一市民として来たとうそをついたと指摘。民主党関係者とのつながりを隠して「FBIを操作し」、投票直前期に選挙戦に影響を与えるサプライズを演出する意図があったと主張した。

一方、サスマン氏はロシアによる大統領選への攻撃がピークを迎えた時期に、自身が代理していたサイバー分野の専門家からの情報を誠実に提供したものだと語った。それとは別に、クリントン陣営を代表して未検証の情報を報道関係者に広める取り組みも行い、記事化されたものもあったとしている。サスマン氏にベーカー氏をだましたり、政治的つながりを隠す意図はなく、そうしたつながりはFBIにもよく知られていたとも主張した。

ダーラム氏は19年にトランプ政権時代のバー司法長官からロシア関連の捜査の検証役に任命された。バー、ダーラム両氏はこの捜査の正当性への疑問を公言している。

ある陪審員はCNNに対し、評議が始まった27日午後には陪審員の意見が分かれていたものの、最終的に有罪に必要な5つの要件が満たされていないとの見解で12人全員が一致したと語った。

サスマン氏の弁護士は「重要性」の要素を繰り返し強調していた。この要素では、サスマン氏が言ったとされるうそがFBIの捜査に影響を与えるだけの重要性を帯びていたことを検察が証明する必要がある。

サスマン氏の家族は無罪評決を受けて安堵(あんど)のため息をもらした。ダーラム氏は部屋がほぼ空になる数分後になっても法廷に残っていた。

サスマン氏の弁護士は先週の最終弁論で、本裁判は大きな「政治的陰謀論」だとあざ笑った。31日にはダーラム氏が司法制度を使って政治行動をしたと非難。「訴追が異常に行き過ぎた案件」であり、「政治は証拠の代わりにならず、我々の司法制度に政治の居場所はない」との声明を出した。

サスマン氏本人は法廷前で記者団に対し、陪審への感謝の意を示し、サイバーセキュリティー分野の弁護士の仕事に戻りたいと語った。

ダーラム氏は「結果に失望しているが、陪審の決定を尊重しその仕事に感謝する」との声明を出した。検察チームの労もねぎらった。

FBIへの虚偽供述を問われたサスマン氏に無罪評決が言い渡された

ダーラム氏の捜査に打撃

これまでダーラム氏の捜査で有罪となったのは1件のみ。元トランプ陣営顧問の盗聴の令状に関わったFBIの若手弁護士が司法取引に応じている。また英国の元スパイ、クリストファー・スティール氏がまとめた文書に関連して、ロシア人の国外居住者1人が訴追されており、10月に裁判が開かれる予定。

サスマン氏の裁判はダーラム氏にとって初の大きな法廷での争いとなった。今回の無罪評決で、政治色の強い捜査を進めているとダーラム氏を批判する人々が勢いづく可能性がある。

クリントン氏の広報担当はCNNに宛てた声明で「今日の無罪評決は、存在しないスキャンダルを作り出そうとした3年間の茶番劇の完全な崩壊を示すものだ。トランプ政権の司法長官が任命した捜査官は右派の陰謀論を推し進めようとしたが、司法制度はうそにだまされなかった」と述べた。

ダーラム氏のチームは裁判を通じて、クリントン陣営の汚い戦術と呼ぶものに焦点を当て、多額の資金を使って対立陣営を調査していたことが明るみに出た。トランプ氏はこれを政治的な武器に利用し、ダーラム氏がクリントン氏支持者やディープステート(影の政府)のエージェントに対するウォーターゲート級の訴追を行うと右派内の興奮を高めた。トランプ氏はさらに、サスマン氏や他の民主党関係者の行為は「死刑に処しうる」と示唆する発言までしていた。

ダーラム氏による「捜査官の捜査」は継続中。ロシアによる選挙介入疑惑を調べたマラー元特別検察官の捜査よりも長期に及んでいる。

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