自殺者相次ぐ米原子力空母、艦内は「居住に適さず」 乗員らが証言

自殺者の相次ぐ空母「ジョージ・ワシントン」艦内は、居住に適さぬ環境と乗員らが証言/USS George H.W. Bush/Anadolu Agency/Getty Images

2022.05.07 Sat posted at 16:00 JST

米バージニア州ニューポートニューズ(CNN) 乗員の相次ぐ自殺が問題となっている米原子力空母「ジョージ・ワシントン」について、現乗員と元乗員計12人が7日までにCNNの取材に答えた。

それによると現在米バージニア州ニューポートニューズの造船所で核燃料の交換や整備点検を行う同空母は事実上建設現場に等しい状態にあり、居住に適するとされる水準を全く満たしていないなど、数え切れないほどの問題を抱えているという。

ジョージ・ワシントンの燃料交換と整備点検は2017年の夏から続いている。当初は4年で終了するとみられていたが、度重なる遅延を受け、現在は早くても23年3月までかかる見通しだと海軍は説明する。

同艦について、今回CNNの取材に応じた水兵らの全員が居住には適さない状態だと口をそろえた。水兵らが乗艦したおよそ1年前にはすでに燃料交換と整備点検の作業工程に入っていたが、乗員の一部を艦内に宿泊させる準備は整っているとみられていた。

しかし水兵らによると、作業開始から数年が経過してもなお、艦は1日を通じて建設区域と化したままだった。提供される食事の質にも不安を覚えたが、上層部はこうした問題を放置し、乗員の不満を聞き入れる気がないように感じたという。

通常、艦内生活の困難で最も苦しい目に遭うのは年少の水兵となる。

取材に応じた水兵らの大半は、匿名を条件に語った。自身や友人たちの海軍でのキャリアに影響が及ぶのを危惧してのことだ。

燃料交換と整備点検が行われている空母内は、事実上建設現場に等しい環境だという

海軍によると、過去1年の間に死亡したジョージ・ワシントンの乗員は7人に上り、このうち少なくとも4人は自殺だった。海軍は同艦の指揮系統や艦内の雰囲気などについて調査に乗り出している。

自殺した水兵の1人は生前、艦の「ひどい」状態を父親に伝えていた。この父親は、「1日中重機がうなりを上げ、煙や臭いの立ち込める空母の中で、どうしたら睡眠がとれるのか?」「1人たりとも水兵がこのような状態の艦に居住するべきではなかった」と述べ、説明を求めている。

一方で、こうした自殺は同空母での悲惨な現実となっており、異常な現象とは言えないと水兵らは指摘する。ある水兵はCNNに対し、不幸なことだがジョージ・ワシントンに乗艦して以降、そうした出来事には慣れてしまったと説明。「実際に目にしたこともある。今に始まった話ではない」と明かした。

水兵らによると、乗艦後は静かな場所を見つけて眠りにつくのはほぼ不可能だ。定期的に停電に見舞われたり、温水が使えなくなったりもする。

また寝台設備にはたいてい空調がない。巨大な金属の構造物である空母の中は、外の気温が増幅されて耐え難い環境になるという。水兵の1人は、冬の寒さで夜中に目が覚めたと振り返る。空母の状況については「最低とはまさにこのことだ」と強調した。

大西洋海軍航空部隊の報道官によれば、寝台設備を含む艦の状況は最初の水兵らが乗艦する前に点検が行われる。艦内で水兵らに提供される食事についても、指揮系統に携わる将校らが日々品質のチェックを完了させているという。

この報道官は6日にCNNの取材に答え、今週には複数の連邦議会議員が同空母を視察に訪れたと説明。調理室や寝台設備などを見て回ったが、どの空間も管理は行き届いていたと述べた。

自殺者相次ぐ米原子力空母、乗員らが語る「惨状」

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