終わりが見えない上海のロックダウン 不満強める住民、ゼロコロナ戦略に疑問

厳格なロックダウンが続く上海で、住民が不満を募らせている/HECTOR RETAMAL/AFP/Getty Images

2022.04.07 Thu posted at 20:55 JST

香港(CNN) 新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)が続く中国の金融都市・上海で、医薬品や食料などの必需品確保が難しくなり、ロックダウンの終わりが見えない中で住民が怒りを募らせている。

上海は全住民2500万人がロックダウンの対象となっている。全土から医療従事者が派遣され、市の対応を支援するために軍も動員された。

5日に確認された新規の症例数は2万例を超え、コロナ禍のピークにあった2020年の武漢を大幅に上回った。

それでも他国に比べれば症例数ははるかに少ない状況だが、ゼロコロナ戦略に固執する中国にとっては激増に当たる。

感染力の強い変異株が拡大し続ける中、ゼロコロナ政策の持続可能性を疑問視する声もある。

新型コロナの症例数は3月上旬から、東部の山東省、南部の広東省、北東部の吉林省など中国各地で増え始めた。

国家衛生健康委員会(NHC)によると、3月末までには中国31省区のうち29省区に拡大。3月に確認された全症例のうち90%を吉林省と上海が占めていた。

3月には複数都市(住民合計3700万人以上)がロックダウンに入った。その多くは4月初旬までに緩和されたが、上海だけは症例数の増加を抑え込むことができていない。

ただ、今回の波の中で報告された新型コロナによる死者は2人のみ。いずれも吉林省で3月に死亡した。

上海では厳格な対策が延長され、長期化に伴って状況は悪化している。

3月下旬の時点で上海当局は、全市的なロックダウンの計画はないと強調していた。しかし3月27日になって突然、市を半分に分けて順番にロックダウンを行うと発表した。

3月31日までにはこのアプローチが破棄されて実質的に市全域がロックダウンに入り、全住民2500万人が検査のための外出を除き、自分の住む地区から離れることを禁じられた。

全住民に義務付けられた検査によって症例数は増え、ロックダウンはさらに延長された。

人通りの絶えた道路の真ん中に立つ作業員

しかしこうした対策は、政府に対する憤りや批判の声が高まる異例の事態を招いた。住民は、食料や医薬品といった必需品の入手が難しいと訴えている。

3月には上海で、ぜんそくの発作を起こした非番の看護師が、消毒のため閉鎖された自身の勤務先の病院の救急病棟に受け入れを拒まれて死亡した。上海の別の住民は、自宅で救急医療が必要な状態になり、病院にたどり着く前に死亡した。

「私たちはコロナで死んでいるのではなく、コロナ対策によって死んでいる」。大手SNSのウェイボー(微博)にはそんなコメントが書き込まれた。

今回の感染拡大は、オミクロン株「BA.1」と、オミクロンの別系統「BA.1.1」「BA.2」が引き起こしている。

BA.2は1月に発見され、世界保健機関(WHO)や米保健当局によると、世界でも米国でも新型コロナの主流株になった。

BA.2の台頭に伴い、1月の第1週以来、世界的に減っていた症例数は、再び増加に転じている。

これまでの研究では、BA.2は感染力が強いことが分かっているが、重症度についてはまだ研究段階にある。

BA.2については、1人の感染者が何人に感染させるかを表す基本再生産数を12とする疫学調査もある。つまり1人から平均で12人に感染する可能性があり、これは同じように空気感染するはしかに匹敵する。BA.1の基本再生産数はおよそ8と推定されている。

上海封鎖が長引く中で、国内外の専門家は、今回の感染拡大が中国のゼロコロナ戦略の終わりにつながる可能性に言及している。

NHCによると、中国の人口14億人のうち約78%が1日までにワクチン接種を完了した。

著名な専門家は3月上旬、ゼロコロナ戦略について「永遠に不変のままであり続けることはない」とウェイボーに投稿していた。

しかしそれはずっと先のことになりそうだ。中国国営環球時報によると、中国疾病予防コントロールセンター(CCDC)首席疫学専門家の呉尊友氏は1日、「引き続き動的なゼロコロナ政策に重点を置く」と発言。他国のような規制緩和や国境の開放に踏み切れば、医療の逼迫(ひっぱく)や死者の増加といった多くの問題を引き起こしかねないと言い添えた。

上海を訪れた孫春蘭副首相は4日、ゼロコロナ達成のためには「より断固たる姿勢、より力強い行動、より効率的な調整」が必要だと強調した。

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