(CNN) 女性たちが傷付いた心をいやすため、美しい自然の中で、同じような悲しみを経験した仲間たちとともに心理療法を受ける――。そんなホテルが昨年末、英イングランド東部のノーフォークにオープンした。
「ザ・ハートブレーク・ホテル」を開いたのは、心理カウンセラーのアリス・ハッドンさん。母を亡くしてしばらく休業した時、心理療法のあり方を見直している自分に気づいた。
恋愛詐欺についてのラジオ番組を聞きながら、さまざまな悲しみを乗り越えようとする女性のためのサービスはあまりないことにも思い至った。
これをきっかけに、傷心の女性たちが本当に必要としている心理療法とは何か、その新たなコンセプトの可能性を探り始めたという。
ハッドンさんは女性だけでチームを結成しようと動き出した。そこへ、ライフコーチングの専門家で旧友のルース・フィールドさんが加わった。
ホテルを運営している心理カウンセラーのアリス・ハッドンさん(左)と、ライフコーチングの専門家ルース・フィールドさん/Katie Wilson
ザ・ハートブレーク・ホテルで過ごす週末は「心の集中治療」だと、ハッドンさんは語る。毛布に湯たんぽ、温かい飲み物、そして暖炉のまきがはじける音。身の回りのことは何もせず、ただ心理療法に集中していればいい。
金曜日から月曜日までの3泊4日で、最大8人を受け入れる。料金は1回2500ポンド(約40万円)。
安全な環境の中で自分を再発見し、新たな自分に生まれ変わる心の旅だ。ここではそれぞれの悲しみからだけでなく、女性に求められる役割分担からも自由になれると、フィールドさんは語る。つらい記憶による症状の改善を図るトラウマ治療の専門家も控えている。
心にも栄養を与えるという植物由来のおいしい食事を楽しみ、暖炉の周りに集まったり、美しい海岸を散歩したりして過ごす。フィールドさんによれば、毎日海辺に出掛けられるロケーションも重要だ。海の広さや香りがいやしになり、ストレスホルモンの分泌を抑えてくれる。
滞在中は1日8時間のグループ療法と海岸散歩で忙しく、自由時間はあまりない。フィールドさんは、参加者を携帯電話も酒類もない環境に置くことが非常に重要だと話す。
ホテルのチームは、できるだけ似たような経験をした女性たちを集めるように心がけている。
参加希望者はまず詳しい質問票に動機などを書いて申し込む。続いてハッドンさんかフィールドさんが長時間、電話で話して適性を見極める。ほかの相談先や療法を紹介するケースもあるという。
最初の2回は、恋人の裏切りと失恋をテーマにして好評を博した。今後は兄弟姉妹関係や更年期、家族との死別などのテーマも検討している。