世界の大気汚染、WHOの新基準では全対象国が不合格

スモッグが立ち込めるインド・ニューデリーの空=2021年10月20日/Amal KS/Hindustan Times via Getty Images

2022.03.23 Wed posted at 20:21 JST

(CNN) 昨年1年間の世界の大気汚染状況をまとめた報告書によると、世界保健機関(WHO)の新基準で合格点に達した国はひとつもないことが分かった。

大気汚染の実態を監視するスイス企業、IQエアが世界117カ国・地域の計6475都市について、有害な微小粒子状物質PM2.5の濃度などを調べた。

WHOは昨年9月、各国政府による保健政策の基準となるよう発表している汚染状況の指針を改定。PM2.5濃度の年間平均の目標値を、それまでの1立方メートルあたり10マイクログラムから同5マイクログラムに引き下げて、基準を厳しくした。

IQエアによると、昨年のデータでは調査対象のすべての国、97%の都市で、汚染がこの基準を上回った。PM2.5の平均濃度が基準を下回った都市は世界で222カ所、地域としては南太平洋の仏領ニューカレドニア、カリブ海の米自治領プエルトリコと米領バージン諸島の3カ所にとどまった。

大気汚染がWHOの基準の10倍以上と、最もひどかった国はインド、パキスタン、バングラデシュなど。1~2倍にとどまったのは北欧諸国やオーストラリア、カナダ、日本、英国だった。

米国の昨年の数値は前年を上回り、WHOの基準の2~3倍だった。全米2400カ所あまりの都市のうち、汚染が最も深刻なのはロサンゼルスだった。

世界6000超の都市について、大気汚染の年間平均値を示した地図

IQエアは世界6000以上の都市について、大気汚染の年間平均値を分析した。青のマークが最高で、PM2.5濃度の年間平均がWHOの基準を満たす都市。最低は紫のマークで、基準の10倍を上回った都市。

PM2.5は大気中に浮遊する極めて小さく危険な粒子。吸い込むと肺の奥深くまで到達し、血液中に取り込まれる。発生源としては化石燃料の燃焼、砂嵐、森林火災などが挙げられ、喘息(ぜんそく)や心臓病、呼吸器疾患との関連が指摘されてきた。

WHOによると、2016年には大気汚染関連で、平均寿命より早く亡くなる早期死亡者が420万人報告された。現行の指針がこの時に適用されていれば、死者は330万人近く減らすことができたはずだと、WHOは推定している。

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