ウクライナ・キエフ(CNN) ウクライナ首都キエフの警察は13日、米国人ジャーナリストのブレント・ルノーさん(50)が首都近郊のイルピンでロシア軍によって殺害されたと発表した。もう1人の米国人ジャーナリスト、フアン・アレドンドさんも負傷した。
キエフ地区警察はルノーさん死亡の証拠として、遺体と米国のパスポートが写った写真、およびルノーさんの氏名が入った米紙ニューヨーク・タイムズの古い記者章の写真をツイッターに投稿した。
キエフ地区警察トップはフェイスブックへの投稿で、ロシア軍がルノーさんを銃撃したと述べ、「占領軍は冷淡にも、ウクライナでロシア軍の残虐行為に関する真実を伝えようとしている国際メディアのジャーナリストさえ殺害する」と非難。「当然ながら、ジャーナリストは危険を背負う。だが米国人のブレント・ルノーは命を懸けて、侵略者の卑劣さ、残虐さ、非情さに脚光を当てようとした」と伝えた。
ウクライナの戦争で死亡が確認された外国人ジャーナリストはルノーさんが初めてだった。今月初め、キエフのテレビ塔が砲撃された際は、カメラを操作していたウクライナ人のイェブヘニ・サクンさんが死亡したと伝えられていた。
非営利組織のジャーナリスト保護委員会は国際法違反を指摘し、「ウクライナのロシア軍はジャーナリストや民間人に対する暴力を即刻停止しなければならない。ルノーさんを殺害したのが誰であれ、責任を問われるべき」とする声明を発表した。
米タイム誌がCNNに語ったところによると、ルノーさんは有名な映像ジャーナリストで、世界的な難民危機に焦点を当てるプロジェクトのためにウクライナで活動していた。
負傷したアレドンドさんはコロンビア系米国人の映像ジャーナリストで、キエフ市内の病院から投稿されたSNSの動画で銃撃の様子を振り返った。アレドンドさんとルノーさんは街から避難する人たちの様子を取材するためイルピンの検問所を車で通過していたところ、ロシア軍に銃撃されたという。
その場にいたのは「私たち2人」だったとアレドンドさんは述べ、ルノーさんは「撃たれて置き去りにされた」と証言、ルノーさんは首を撃たれていたと言い添えた。「私たちは離れ離れになり、私は(担架に)乗せられた」とアレドンドさんは語り、どうやって病院にたどりついたのかと尋ねられると「救急車、分からない」と答えた。
アレドンドさんは米コロンビア大学ジャーナリズム大学院の非常勤教授も務める。同大学院のスティーブ・コール学部長は、アレドンドさんのけがに関する情報はまだ入っておらず、詳しい情報を入手しようとしているところだとCNNに語った。
ウクライナ内相顧問はテレグラムに声明を発表し、ルノーさんは「命を犠牲にして侵略者の陰湿さ、残虐さ、非情さを暴こうとした」と追悼した。
キエフ地区当局者は11日、キエフ北郊のイルピンはここ数日でロシア軍による砲撃が激化し、大きな被害が出ていると伝えていた。
ルノーさんは優れた放送作品に贈られるピーボディ賞の受賞歴もある映像ジャーナリストで、米ニューヨークとアーカンソー州リトルロックを拠点として活動。兄弟のクレイグ・ルノーさんと共に、イラクやアフガニスタン、ハイチ、エジプト、リビアといった世界の紛争地の人道問題を伝えていた。