沈没から107年、英探検隊の船を南極沖で発見

1915年に南極探検の途中で沈没した木造船が発見された/Falklands Maritime Heritage Trust and National Geographic

2022.03.10 Thu posted at 15:57 JST

(CNN) 100年以上前に南極大陸沖で沈没した、極地探検家アーネスト・シャクルトンの船「エンデュアランス号」がこのほど、深さ3008メートルの海底で見つかった。見たところ船体本来の姿をとどめており、保存状態は良好だという。

南極探検に使用され、1915年に沈んだ同船は、南極海の一部を構成するウェッデル海で見つかった。

今回の発見は、フォークランド海洋遺産財団と、歴史家のダン・ショウ氏が共同創設者を務めるコンテンツプラットフォーム「ヒストリー・ヒット」が協力して実現した。

探索ミッションの責任者メンスン・バウンド氏は声明で、「これまで目にした木造の沈没船の中でも群を抜いて素晴らしい。直立姿勢のまま、ゆったりと海底に鎮座している。損傷はなく、見事な保存状態だ」と語った。

そのうえで「これは極地の歴史上、画期的な出来事だ」と付け加えた。

「エンデュアランス号」の名が入った船体。保存状態は極めて良好だという

アイルランド系英国人のシャクルトンは長きにわたって南極に魅了され、計4回の探検を実施した。

エンデュアランス号は14年に英国を出港。翌年、南極大陸のマクマード海峡に到達した。

しかし現地の過酷な自然環境の中、同船はウェッデル海で分厚い氷に進路を阻まれた。シャクルトンを含む28人の隊員は船を捨て、海氷上にキャンプを張った。

その後探検隊は無人島のエレファント島までたどり着く。ここでシャクルトンを含む数人が志願して、救命艇でサウスジョージア島を目指し出発。上陸後に島を徒歩で横断した後、ノルウェー人の運営する捕鯨基地にたどり着いた。エレファント島に残っていた隊員も救出し、数カ月後には探検隊の全員が生還を果たした。

探検自体は失敗に終わったものの、1人の死者も出さなかったこの遠征は、隊員の粘り強さとシャクルトンの見事なリーダーシップが可能にした偉業とみなされた。

その後、22年にも南極探検隊を率いたシャクルトンだったが、サウスジョージア島で死去し、現地に埋葬された。47歳だった。

今回の探索に使用した輸送船は「エンデュアランス22」と名付けられた

乗り捨てられたエンデュアランス号は、ウェッデル海に沈んだままとなっていた。

今回の探索ミッションに参加した科学者、歴史家、映画制作者らは「エンデュアランス22」と名付けた船舶で南アフリカのケープタウンを出港。水中探査用の機材を使って沈没したエンデュアランス号を発見した。

南極条約の指針に基づき、エンデュアランス号を移動させたり解体したりすることはできない。今後はその場所に沈んだ状態で調査や撮影が行われる見通しだ。

探索を主導したジョン・シアーズ博士によれば、チームは今回の発見に関する前例のない教育プログラムも実施する。現地からのライブ配信などを通じて、世界中の若い世代がミッションとつながることを可能にするとともに、困難を乗り越えた過去の南極探検の素晴らしい物語に触れる機会も提供する考えだという。

沈没した南極探検隊の船、107年ぶりに発見

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