超新星残骸を取り巻く雲、NASAの最新衛星が撮影

超新星残骸「カシオペア座A」の画像。今回打ち上げたIXPEが観測したX線データは紫色、以前チャンドラX線観測衛星が観測した高エネルギーX線は青色で重ねて示されている/NASA/CXC/SAO/IXPE

2022.02.17 Thu posted at 20:30 JST

(CNN) 打ち上げから2カ月超を経て、米航空宇宙局(NASA)のX線偏光観測衛星(IXPE)が初めて撮影した画像が公開され、有名な超新星残骸「カシオペヤ座A」の驚くべき姿が捉えられた。

画像にはカシオペヤ座Aの残骸の周囲にあるガスの雲が輝く紫色で示されている。これは爆発による衝撃波が周囲のガスを極度の高温まで熱した際に生成されたもので、宇宙線と呼ばれる高エネルギーの粒子を加速させる。

イタリア・ローマにある国立天体物理学研究所でIXPEを担当するパオロ・ソフィッタ主任研究員は、「IXPEが撮影したカシオペヤ座Aの画像は素晴らしく、この超新星残骸をもっと知るためにも、偏光データの分析を楽しみにしている」と語った。

NASAとイタリア宇宙機関が協働するIXPEには3機の望遠鏡が搭載されている。カシオペヤ座Aはこれまでにも他の望遠鏡を使用して観測が続けられていたが、IXPEは超新星やブラックホール、中性子星といった宇宙にある並外れた物体の一部について新たな知見を明らかにすべく設計されている。

地球から約1万1000光年先に位置するカシオペヤ座Aの美しい残骸は現在、膨張を続ける高温ガスの巨大な泡となっている。銀河系で最も新しいとされる約340年前の超新星爆発の残骸で、その光は1670年代に初めて地球に到達した。

X線は極端な状況から生まれる光の波で、こうした状況には強力な磁場や天体の衝突、爆発、極度の高温、高速の回転などが含まれる。

この光にはそれを生み出した物の特徴が刻まれているが、地球の大気がX線を遮ってしまう。そのため、科学者は宇宙にあるX線望遠鏡に観測を頼る形となっている。

IXPEが撮影したカシオペアAのX線強度の分布。紫、青、赤、白の順にX線の明るさが強まる

今回公開された画像には、NASAのチャンドラX線観測衛星がかつて捉えたX線データも青色で示されている。チャンドラは1999年に打ち上げられ、すぐにカシオペヤ座Aを対象として設定。超新星残骸の中心にブラックホールもしくは中性子星が存在することを明らかにした。ブラックホールや高密度の中性子星はしばしば、恒星の死という激烈な出来事により生み出される。

米アラバマ州ハンツビルにあるNASAのマーシャル宇宙飛行センターを拠点とし、IXPEの主任研究員を務めるマーティン・ワイスコフ氏は声明で、「IXPEによるカシオペヤ座Aの画像は、チャンドラによる同じ超新星残骸の画像と同じように歴史的なものだ」と指摘。「これはIXPEが持つ、カシオペヤ座Aについての新たな、そして目にしたことがない情報を入手する潜在能力を示すものだ」と述べた。

IXPEはしばしば見逃されてきた、偏光と呼ばれる宇宙線源の様相を捉えることが出来る。光は光子を散乱させるものを通過する際に偏光する。そしてあらゆる偏光は、宇宙線源やその進路に関する固有の痕跡を携えている。非偏光はあらゆる方向に振動するものの、偏光は一定方向においてのみ振動する。

IXPEが収集したカシオペヤ座Aのデータは、10光年の幅がある残骸の中で偏光がどのように変化しているかについて、科学者の測定を手助けするものとなり得る。

IXPEをX線の偏光研究に活用することで、ブラックホールや中性子星といった、爆発した恒星の残骸やその環境、X線が生まれた方法についての理解が進む可能性がある。宇宙に存在する並外れた物体に関するこうした視点はさらに、物理学についてのより大きな基礎的な問題への答えを明らかにし得るという。

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