月面衝突が予想される物体、米ではなく中国ロケットの残骸だった NASA発表

NASAは、3月4日に月面衝突が予想されるロケットの残骸が、中国が2014年に打ち上げた月探査機「嫦娥5号」のT1ブースターと思われると発表した/Matt Cardy/Getty Images

2022.02.15 Tue posted at 13:15 JST

(CNN) 米航空宇宙局(NASA)は14日、3月4日に月面衝突が予想されるロケットの残骸について、米スペースXの「ファルコン9」の第2段ではなく、中国が2014年に打ち上げた月探査機「嫦娥5号」のT1ブースターと思われると発表した。

月面衝突が予想される物体については、軌道力学の研究者で天体ソフトウェアの開発を手掛けるビル・グレイ氏の発表で明らかになった。同氏は15年の時点で、この物体は同年に米国の深宇宙気候観測衛星「DSCOVR」の打ち上げに使われたファルコンロケットの第2段だったと断定していた。

当初「WE0913A」と呼ばれたこの物体は、DSCOVRの打ち上げの2日後に、月の近くを通過した。

ほかの専門家やNASAもグレイ氏の説を支持し、NASAはロケットの軌道観測を続けていた。

しかしグレイ氏はこのほど、NASAジェット推進研究所のジョン・ジョルジーニ氏から指摘を受け、自身の誤りに気付いたと明らかにした。

「ジョンの指摘によると、DSCOVRの軌道は月にそれほど近くはなかった。DSCOVRが別の場所にいたのに、第2段が月の近くを通過するのは少しおかしい」(グレイ氏)

ロケットの残骸は、米東部標準時3月4日午前7時26分に月面に衝突する見通し

NASAは14日、月面衝突が予想されるのは嫦娥5号のT1ブースターと思われると発表。ジェット推進研究所でこの物体の16~17年にかけての軌道を分析した結果、衝突が予想される物体はファルコン9の残骸ではないことが分かったとしている。

一方、グレイ氏が自身のデータを検証して出した結論は、NASAとは異なる。同氏は、この物体は中国が14年の月探査機打ち上げに使ったロケット「長征3C」の第3段だとしている。

ロケットの残骸は米東部標準時3月4日午前7時26分に月面に衝突する見通し。ただし衝突地点は月の裏側にあり、地球からは観測できない。ロケットは墜落の衝撃でバラバラになり、全長約10~20メートルのクレーターができると予想されている。

米ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのジョナサン・マクダウェル氏は、深宇宙軌道の宇宙ゴミを突き止めることは「決して簡単ではない」と言う。それでも同氏は「少なくとも80%、恐らくは90%の確率」で、グレイ氏が新たに打ち出した説の方が正しそうだと話している。

その上でマクダウェル氏は、NASAなどの公的機関が個人や学者に頼ることなく深宇宙の観測を強化する必要があることが、今回のロケット残骸をめぐる混乱で浮き彫りになったと指摘した。

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