中国の人権活動家が置かれたもう一つの「バブル」、白熱する五輪の陰で

五輪期間中はより厳しい監視下に置かれていると語る中国の人権活動家、胡佳さん/ Simon Song/South China Morning Post/Getty Images

2022.02.12 Sat posted at 11:50 JST

北京(CNN) 冬季五輪の出場選手たちが金メダルを掛けた戦いを繰り広げている中国・北京では、新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐため、選手やメディアなどの関係者を外部から遮断した、バブルと呼ばれる広大なエリアで競技が実施され、世界中の注目を集めている。

だが北京の別の場所では、著名な人権活動家である胡佳さんが、違った形のバブルの中で再び暮らしている。五輪の開催期間中、自分を公衆の目に触れさせたくないと望む当局によって、「自宅軟禁」が科されていると、胡さんは話す。

自ら「数週間にわたる自宅下での制限」と形容する期間中、胡さんはCNNの取材に対して、「冬季五輪は非常に重要な政治的イベントで、『調和を欠いた声』は認められないということだ」と指摘。「中国では、私のような人々は『国内の敵対勢力』と呼ばれており…それが彼らにとって、外の世界から私を隔絶させる必要がある理由だ」と述べた。

胡さんは2000年代初め、人権の擁護者として世界的な知名度を獲得。ノーベル平和賞を受賞した反体制派の故劉暁波氏とも親交を持っていた。

胡さんは1月15日以来、病床にある母親の世話をするために外出する場合を除いて、自宅を出るのを制限されていると語る。20年近く国家による24時間の監視体制に置かれているが、現状はそれを厳しくしたものだという。

またこうした扱いは、同国における敏感な政治的イベントの期間中にすでに受けており、慣れてしまったとも語った。

胡さんによると元々は五輪期間中、完全に北京を退去し、広東省に移るよう命じられていたが、新型コロナの流行によって取りやめとなったという。

バブルと呼ばれるエリアの境界に立ち、車両などの出入りを管理する警備員ら

だが規制に直面しながら冬季五輪に至る数カ月間を過ごす反体制派が胡さん一人かと言えば、全くそんなことはない。同国で権利を訴える人々をサポートする市民ネットワーク「中国人権擁護者」でリサーチ等を担当するウィリアム・ニー氏は、冬季五輪前の段階で、人々の所在を把握しようとする公安、また著名な活動家や弁護士の自宅軟禁および拘束に関する報告例が増加傾向にあったと指摘。

「五輪は中国に対して、国際社会における同国の影響力を示す機会を与えた。中国は、うるさい活動家がその邪魔をして人権侵害について語るのを望んでいない」と話し、数多くの著名な権利の擁護者たちが、「公安によって常時監視されている」と付け加えた。

五輪期間中に自宅で軟禁されているという胡さんの主張、そして他の人権活動家もまた拘束されたり、監視を受けたりしていることについて、CNNは同国公安省にファックスでコメントを求めた。だが北京市当局へと差向けられると、複数回にわたって電話を掛けたものの、北京市政府が応答することはなかった。

胡さんは今回の五輪の開会式を、北京市内にある年老いた両親の家で観たという。ここは公安関係者が唯一外出先と認めた場所であり、胡さんによれば、もし反抗した場合には取り消すと彼らに脅された特権でもあるという。さらにまた、もし事態が悪化した場合、再び刑務所に収監される可能性もあると、胡さんは語る。だがそれでも、本人には伝えたいメッセージがある。

「今回の五輪は、開催国の人権問題にこれほどの注目が集まった史上唯一の大会かもしれない。これは、ウイグル族やチベット族、香港人、台湾人たち、そしてまた市民や人権活動家、中国本土に現在いる私たちのような反体制派など、中国の人権問題を探って見つけ出す本当に良い機会だ」「世界がこれを明確に認識し、人権についてもっと注意を払うことを願っている。冬季五輪の期間中だけでなく、民主主義、人権、そして中国の未来について注視し続けることを」

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