茎に通した人間の椎骨、約200本発見 略奪で破壊された遺骨修復か ペルー

ペルーで見つかった、茎に通した人間の椎骨の一部/C. O'Shea/Antiquity Publications Ltd.

2022.02.03 Thu posted at 08:21 JST

(CNN) ペルー南部のチンチャ渓谷にある先住民の墓地の遺跡調査で、アシの茎に人間の椎骨(ついこつ)を通した標本約200本が見つかった。これまで知られていなかった独特の方法で遺体を扱っていたことが分かったとして、国際研究チームが1日の考古学誌に発表した。

アシの茎に通した椎骨は、先住民の大規模墓地「チュルパス」で発見された。制作されたのはインカ時代が末期を迎え、欧州人による植民地化が進んだ1450~1650年ごろと推定される。

同地で発見された192本はほとんどが、それぞれ1人の人物の遺骨から作られていたことが分かった。

論文筆頭筆者で英イーストアングリア大学のジェイコブ・ボンジャース氏によると、この時代のチンチャ渓谷は、疫病や飢饉(ききん)のために人口が激減した「激動」の時代だった

欧州人が到来する前のチンチャ渓谷は1000~1400年ごろまでチンチャ王国が栄え、強大なインカ帝国と同盟を結んでいた。しかし欧州の植民地化が進む中、世帯主人口は1533年の3万人から、1583年までに979人へと激減した。

ボンジャース氏によると、同地では何百もの墓地で、欧州人が金銀の装飾品の略奪や先住民の宗教や風習の根絶を目的に、略奪を繰り返していたことが分かっている。

茎を通した椎骨は、頭蓋に差し込まれた状態で発見された

アシの茎に通された椎骨を調べた結果、略奪によって破壊された遺体を修復するために制作された可能性があることが判明。放射性炭素年代測定を行ったところ、椎骨をアシの茎に通す作業は、遺体が最初に埋葬された後に行われていたことが分かった。

「茎に通した椎骨は、墓荒らしに対して死者を復元するためにつくられたと思われる」とボンジャース氏は解説する。「茎に通した椎骨は、欧州の直民地化に対する直接的な、儀式化された、先住民の反応だったことが、我々の調査で分かった」

チンチャ峡谷の先住民にとって、死後も完全な姿を保つことは極めて重要だった。近郊の先住民族チンチョロ人は、エジプトより何千年も前から、死者を弔うミイラ制作の技術を持っていたことで知られる。

アンデス山脈のミイラが欧州人によって破壊されると、先住民は破壊された遺体からできる限りの部位を救い出し、新しい儀式を形成した。

今回見つかった茎に通された椎骨も同様に、略奪で破壊された遺体を修復して形を整えようとしたものだった可能性がある。

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