米・NATOの回答、ロシアの懸念払しょくせず ラブロフ外相

プーチン氏もロシアの安全保障上の要求に対する米・NATOの回答に目を通したという/Alexei Nikolsky, Sputnik/Pool/AP

2022.01.28 Fri posted at 14:00 JST

モスクワ(CNN) ロシアのラブロフ外相は27日、ロシアの安全保障上の要求に対する米国と北大西洋条約機構(NATO)の書面回答は、NATOの東方拡大に対するロシア側の懸念を払しょくするものではなかったと述べた。ロシアに対しては隣国ウクライナに侵攻するのではないかとの懸念が高まっている。

ラブロフ氏はモスクワで記者団に「主要な論点で前向きな回答がなかった」「主要な論点とは、NATOがこれ以上東方に拡大するのを許容できないこと、ロシア連邦の領土を脅かす攻撃用武器を配置しないことに関する我々の明確な姿勢を指す」と述べた。

ロシアはウクライナとの国境周辺で大規模な軍の増強を進めており、両国間の緊張はこの数年で最も高まっている。

ロシアは侵攻の計画を繰り返し否定する一方で、NATOによる兵器供与の増加や軍事訓練の実施といったウクライナ支援がロシア西側国境の脅威を高めていると主張している。

ラブロフ氏は、米国とNATOが以前、欧州安全保障協力機構(OSCE)の枠組みの中でロシアの安全を犠牲にする拡大は行わないと合意していたと指摘。「我々は口頭での約束や、OSCEの全加盟国が署名した書面を提示している。そこには米国大統領(1999年のイスタンブール宣言、2010年のアスタナ宣言)も含まれる。我々の西側パートナーはより深刻な状況から出ていく必要がある」と述べた。

さらに「この原則は明確に述べられていて、2つの相互に関連する主要なアプローチがある。1つ目は、すべての国に軍事同盟を自由に選択する権利を認めること、2つ目は、すべての国が他国の安全保障の犠牲の上に自国の安全保障を強化しない義務を負うことだ」「言い方を変えれば、同盟関係を選択する権利は、ロシア連邦を含む他のOSCE加盟国の安全保障上の利益を考慮に入れる必要があるという、明確な条件が付されているということだ」と語った。

ただ、今回の書面回答が今後の真剣な議論につながる可能性はあると認め、それは2点目に関する議論になると付け加えた。

ウクライナ東部ドネツク州で親ロシア派の反政府勢力と対峙するウクライナ軍の兵士

クレムリン(ロシア大統領府)のペスコフ報道官も同日、ロシアの主要な懸念は払しょくされていないと述べたが、米・NATOの回答に対する断定的な回答は避けた。プーチン大統領は既に書面に目を通したと明かし、「分析には少し時間がかかり、結論を急いでいない」と語った。

ブリンケン米国務長官は26日、米国の回答は「ロシア側が望んだ場合の真剣な外交上の道筋を提示するもの」だと述べた。

米国はこれまで、ロシア側が要求するウクライナのNATO加盟の不承認について、交渉の余地はないと繰り返してきている。ブリンケン氏は回答の内容の詳細には触れなかったが、西側諸国が公に示しているNATOの「門戸開放の方針」の支持を強調し、その変更はないと述べた。

NATOのストルテンベルグ事務総長は同日、NATOからの回答は「米国と並行して」送付されたと語った。ロシア側の姿勢とは「大きな隔たり」があるとしながらも、3つの主要な分野で「進展の余地」があると述べ、ロシアとNATOがモスクワとブリュッセルにそれぞれの事務所を開設することを提案した。

こうした外交上のやりとりが、数週間続くロシアと西側の交渉の行方を変えるかは不透明な状況だ。

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