前ローマ教皇は聖職者の子ども虐待を知っていた、調査報告書が指摘

前ローマ教皇ベネディクト16世/Franco Origlia/Getty Images

2022.01.21 Fri posted at 12:26 JST

ベルリン(CNN) 前ローマ教皇のベネディクト16世(94)がドイツ・ミュンヘンで大司教を務めていた1977~82年に、子どもを虐待する聖職者について知りながら対応しなかったと指摘する調査報告書が20日、公表された。前教皇は長年、虐待を知らなかったと主張してきた。

教会から委託を受けた法律事務所が数十年に及ぶミュンヘン大司教区での性的虐待を調べ、報告書にまとめた。

同事務所の弁護士は前教皇が「事実について知らされていた」と指摘。4つの件で不適切な対応が認められ、そのうち2件は大司教在任中に起きた虐待に関するものだと述べた。両件とも、虐待を行った人物が宗教指導者としてケアを行う活動を続けていたという。

ベネディクト16世は報告書の発表を受けて、教会内部でのこうした虐待に「痛みと恥」を感じると表明。前教皇の秘書によると、1000ページ以上に及ぶ報告書を今後数日かけて目を通すという。

前教皇はこれまで、故意に虐待を隠していたとの指摘を否定。2013年には「深い驚きとともにこれを受け入れるのみで、こうした事案を隠そうとしたことは決してない」と述べている。

しかし、調査を行った弁護士は1980年1月15日のミュンヘンの教会指導者による会合の議事録のコピーを提示。この会合では「司祭X」と呼ばれる虐待を行った人物に関する決定が行われた。前教皇は会議への出席を否定しているが、弁護士は議事録に出席の記録があると指摘。前教皇の否定は「信じがたい」と述べた。

記者会見を行う弁護士のウルリッヒ・ワストル氏=20日

弁護士によると、前教皇は今回の調査に関して声明を送ってきたが、ほとんど信頼に足るものではなかったという。前教皇の立場を要約すると「ある文書が提出されたという証拠はあるが、私がそれを読んだという証拠はない」というものだという。

報告書は概要が発表された後、20日に全文も公開される予定となっている。

ミュンヘン大司教区は2010年、前教皇が聖職者による性的虐待を知らなかったと発表。現在の大司教は報告書の内容に「ショックと恥を感じる」と語った。

ローマ教皇庁(バチカン)は報告書の公開を待ってコメントすると発表した。

ベネディクト16世は13年、この数百年で初めて教皇を生前退位した人物。在任中には世界中のカトリック教会内の性的虐待スキャンダルに見舞われていた。今回の報告書は前教皇の名声を損なう恐れがある。

13歳の時に聖職者から性的虐待を受け、被害者への正義の実現を求める団体を運営するドイツ人男性は、調査で前教皇が批判されたことを称賛。「ベネディクト前教皇を守るために積み重ねられたうそが音を立てて崩れた。ベネディクトは1980年以降の数知れない被害者、司祭Xの被害者の虐待に加担している」と語った。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。