(CNN) テニスのジュニア選手、ロシア出身のクセーニャ・エフレモワさん(12)は、ごく幼いころからスターの素質をのぞかせていた。指導者のパトリック・ムラトグルー氏も、その「とてつもない」才能を手放しで称賛する。
母親で元プロテニス選手のジュリアさんがCNNとのインタビューで語ったところによると、クセーニャさんは3歳になる前のある日、テニスを練習していた兄の横でラケットを手に取り、自分でトスしたボールを打ち始めた。
ボールは毎回ネットを越え、動作も完璧。ジュリアさんはクセーニャさんの情熱とやる気を見て、今が始め時だと確信した。「私が決めたことではない。娘はそうやって自らテニス人生のスタートを切った」と、ジュリアさんは振り返る。
クセーニャさんは今やテニス界で才能を広く知られ、インスタグラムで3万5000人のフォロワーを誇るスターだ。ナイキやヨネックスとスポンサー契約も結んでいる。
素晴らしいアスリート
現在はフランスの名門「ムラトグルー・テニスアカデミー」に所属する。アカデミー創始者でセリーナ・ウィリアムズ選手(米国)のコーチを務めるムラトグルー氏は、ジュリアさんに付き添われてやってきた9歳のクセーニャさんを見て、すぐに並外れた可能性を感じたという。
クセーニャ・エフレモワさんと母親のジュリアさん/ksenia.efremova.tennis/Instagram
同氏は「とにかく運動神経が良い。テニス以外にも180度開脚やダンスと何でもできる」「母親に似て背が高くなるだろう。ショットが素晴らしく、テクニックも非常にクリーン。ボールを早くとらえることができ、攻撃的で、試合もうまい。すべてを兼ね備えている」と絶賛する。
ジュリアさんは、テニス以外にも複数のスポーツをやらせたことが、バランスの良い選手に育った理由だと話す。持久力や柔軟性が身についたうえ、早くからテニスをやり過ぎて飽きてしまうこともなかった。
特に体操は毎日3時間練習することも少なくなかったが、テニスは1時間。幼いころは週3回にとどめ、強制はしなかった。水泳や英語、ブレイクダンスなどを幅広く習わせた。
ジュリアさんは「娘は自分を信じているし、迷いがない。最高の選手になることを心から確信している」と、力を込める。テニスで何がしたいかと本人に尋ねると、「伝説になりたい」という答えが返ってくるという。
悲劇を乗り越えて
クセーニャさんの決意を最もよく表していたのが、スウェーデンで昨年開催されたテニス・ヨーロッパ・ジュニアツアーでの勝利だった。
クセーニャさんの父親で元テニスコーチのアレクセイ・エフレモワさんは、2年以上前から悪性リンパ腫で闘病中だった。大会期間中、ジュリアさんに危篤の知らせが入った。
ジュリアさんは迷った末、クセーニャさんにそれを伝えた。クセーニャさんはショックを受けて泣いていたが、大会を棄権することは拒んだ。
インスタグラムのフォロワーは3万5000人を超え、ナイキやヨネックスとスポンサー契約を結んでいる/ksenia.efremova.tennis/Instagram
決勝戦に臨んだのは、父が亡くなってからわずか6日後の12月3日。クセーニャさんは見事優勝し、ジュリアさんが運営するインスタグラムのアカウントにこう書き込んだ。「あなたはこの宇宙で一番強い人として、私の心にいつまでも生き続けるでしょう。お父さんの夢を全力でかなえます。空から見ていてくれるよね」
ジュリアさんはクセーニャさんが戦い続けると決めた時、あまり驚かなかったと話す。クセーニャさんのそんな強さは父親譲りだ。アレクセイさんもきっと娘の決断に賛成したはず。ジュリアさんはそう信じている。
クセーニャ・エフレモワさん、ロシアの天才テニス少女