米弾道ミサイル原潜、異例のグアム寄港 中国や北朝鮮にメッセージか

米海軍のオハイオ級弾道ミサイル原子力潜水艦「ネバダ」が先週末、米領グアムに寄港した/US Navy

2022.01.18 Tue posted at 10:49 JST

香港(CNN) 米海軍のオハイオ級弾道ミサイル原子力潜水艦「ネバダ」が先週末、米領グアムに寄港した。アナリストからはこれについて、インド太平洋地域の緊張が高まる中で同盟国と敵の双方にメッセージを送る動きだとの指摘が出ている。

トライデント弾道ミサイル20基と核弾頭数十発を搭載するネバダは15日、グアムにある海軍基地に入港した。弾道ミサイル原潜がグアムに寄港するのは2016年以来で、寄港が発表されるのは1980年代以降でわずか2度目だ。

米海軍の声明では今回の寄港について「米国と地域の同盟国の協力を強化し、米国の能力や柔軟性、即応態勢、インド太平洋地域の安全と安定に対する継続的な関与を示すものだ」としている。

通常、米海軍が保有する弾道ミサイル原潜14隻の動きは極秘にされている。これらの潜水艦は原子力を動力とするため一度に数カ月連続で潜航することが可能で、航続時間を制約する要素は150人を超える乗組員の生活維持に必要な物資のみとなる。

海軍によると、オハイオ級潜水艦は平均77日間にわたって海にとどまり、その後はメンテナンスや補給のために約1カ月港に滞在する。

母港の外では艦影が撮影されることさえまれだ

ワシントン州バンゴーやジョージア州キングズベイにある母港の外では艦影が撮影されることさえまれだ。徹底した秘密主義の結果、弾道ミサイル原潜は「核の3本柱の中で最も生残性の高い部分」となっている。核の3本柱にはこれ以外にも、米本土のサイロに格納される弾道ミサイルや、B2やB52のような核兵器を搭載可能な爆撃機がある。

ただアナリストによると、台湾の地位を巡る米中間の緊張がくすぶり、北朝鮮がミサイル実験を強化する中、米国は弾道ミサイル原潜を展開することで中国や北朝鮮には不可能なメッセージを発することができるという。

米海軍の元潜水艦長で、現在は新アメリカ安全保障センターでアナリストを務めるトーマス・シュガート氏は「意図的かどうかはともかく、弾道ミサイル原潜はメッセージを送っている。米国は100発あまりの核弾頭を相手の玄関先に配置することができるが、相手はそれを知ることすらないか、あるいは大した対応が取れない、というメッセージだ。これが逆の立場になることはありえず、そうした状況はしばらく続く」と述べた。

北朝鮮による弾道ミサイル原潜の開発計画はまだ始まって間もない。中国は推定6隻の弾道ミサイル原潜を保有するが、米海軍の保有数には見劣りする。

また戦略国際問題研究所の専門家による2021年の分析によると、中国の弾道ミサイル原潜は米国のものほどの能力はない。中国の094型弾道ミサイル潜水艦は米潜水艦の倍の騒音を発するため探知されやすいほか、ミサイルや弾頭の搭載量でも劣る。

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