南極大陸西岸の棚氷、5年以内に崩壊の可能性 米英研究者ら

南極大陸西岸の棚氷が5年以内に崩壊する可能性があることがわかった/NASA

2022.01.03 Mon posted at 16:49 JST

(CNN) 南極大陸の西岸に浮かぶ棚氷が今後5年以内に崩壊し、その影響で世界の海面上昇が加速する恐れもあるとの研究結果が発表された。

西岸には「終末の氷河」とも呼ばれるスウェイツ氷河がある。面積は米フロリダ州や英国に匹敵するが、そこから解けだす氷はすでに毎年約500億トンに上り、世界の海面上昇の4%を占めている。

スウェイツ氷河を束ねる「安全ベルト」のような役割を果たしてきたのが、海面に張り出した棚氷だ。米地球物理学連合(AGU)の年次会合で米英の共同チームが報告した研究によると、最近の衛星写真から、この棚氷に大きなひびが広がっていることが分かった。

英南極観測局のピーター・デービス博士によると、ひびが全体に広がれば、棚氷は車のフロントガラスと同じように壊れやすくなり、やがて粉々に砕けてしまう。

棚氷を失ったスウェイツ氷河も崩壊して、海に流れ込む速度が増す。世界の海面は1~3メートルも上昇することが予想される。沿岸部の町や海抜の低い島は、特に大きな危険にさらされるだろう。

こうした事態を招いている主な要因として、海水温の上昇が挙げられる。スウェイツ氷河の研究を進める国際チームは2020年の研究で、氷河の下の海底が予想されていたよりも深く、そこを流れる暖かい海水が下から氷河を解かしていると指摘した。

上空から撮影された南極の様子=2017年11月4日

デービス博士らの研究では、棚氷が海底に接する「接地線」のあたりの海水は温度が高く、塩分が多いことも分かった。

水中車両を使って棚氷の下の様子を調べたコーネル大学のピーター・ウォシャム博士によると、接地線は今後、ゆっくりと後退することが予想される。

デービス博士によれば、暖かい海水で水面下の氷が解けると、水の流れが速くなって氷のひびが増え、崩壊の危険がさらに高まる。

研究チームのメンバー、コロラド大学ボルダー校のテッド・スキャンボス博士は、海面上昇が本格的に加速するのは数十年先になるとの見通しを示したうえで、この流れを止めるのは不可能に近いと指摘した。

デービス博士も、これから起きることは止められず、できることはスピードを抑える程度だと主張。人間はこの数十年間、温室効果ガスを排出し続けた結果を受け止めているのだと語った。

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