インドネシア火山噴火を引き起こしたのは豪雨だった 今後増える可能性も

大雨によってスメル火山の噴火が誘発されたとする見解が発表された/Antara Foto/Seno/Reuters

2021.12.09 Thu posted at 11:53 JST

(CNN) インドネシア・ジャワ島のスメル火山噴火について、同国エネルギー鉱物資源省の専門家が、噴火を誘発させたのはそれまで何日も続いた大雨だったとする見解を発表した。

今回の噴火では、火山をふさぐ役割を果たしていた溶岩ドームが、何日も降り続いた大雨のために徐々に浸食され、一部が崩落した。エネルギー鉱物資源省地質庁のエコ・ブディ・レロノ長官によると、噴火を引き起こしたのはこの「ドーム崩壊」だった。

「写真とデータに基づき12月4日の噴火前と噴火後のドームの大きさを比較すると、その日の大雨でドームの体積が大きく失われた様子が見てとれる」とエコ長官は解説する。

不安定な状態にある溶岩ドームが崩落する理由はいくつかある。だが、大雨が崩落の原因になり得ることは、次第に分かってきている。

今後は気候変動の影響で、今回のような火山噴火が増えるかどうかという疑問も浮上している。専門家によると、溶岩ドームの崩壊による火山噴火は、規模も破壊力も大きくなる傾向がある。

噴火の被害を受けた家屋=8日、インドネシア・ジャワ島ルマジャン

4日に起きた噴火ではガスや灰が入り混じった火砕流が発生し、これまでに30人以上が死亡。今も行方不明者数十人の捜索が続いている。建物は数千棟が破壊され、火山灰の下敷きになって壊滅した集落もある。

噴火の威力は通常よりも大きかった。エコ長官によると、一般的な火山噴火では噴煙の高さは数百メートル程度だが、スメル火山の噴煙は上空15キロの高さにまで吹き上がった。火砕流は地上12キロ以上の範囲に到達し、通常の5キロを大幅に超えた。

インドネシアでは、土壌が肥沃(ひよく)で耕作に適した火山のふもとに数百万人が暮らしている。スメル火山から10キロの範囲内には8000人以上が暮らしていた。

スメル山については活動が活発化するたびに噴火に対する警戒が呼びかけられていた。しかしオーストラリア・モナシュ大学の火山学者ヘザー・ハンドリー氏によると、今回のように大雨によって引き起こされる噴火は予知が難しい。

地球温暖化に伴い、豪雨は世界各地で増えることが予想され、今回のような大規模噴火がほぼ予告なく発生する懸念も強まっている。

噴火の影響を受けた地域。救助ボランティアは遺体袋を運んでいる=7日、インドネシア

実際にそうなるかどうかは不明だ。しかし2018年、大雨が数日続いた後にハワイのキラウエア火山が噴火して以来、気候変動と火山噴火が関係する可能性を問いかける声は強まっていた。

「まだ分かっていないことはたくさんある。だが、そうでなければ見過ごしていたかもしれない、外的要因によって火山噴火が発生するメカニズムについて考えるのは良いことだ」とハンドリー氏は指摘する。

キラウエア火山に関して科学誌ネイチャーに掲載された論文によれば、同火山の場合、何日も続いた豪雨のために地下水が増水して地下の圧力が強まり、岩盤に亀裂やずれが生じて、マグマが地表に噴出しやすくなった。

ハンドリー氏はさらに、火山を覆う氷や雪の溶解によって噴火の頻度が増す可能性も指摘している。

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