注文したのに買えなかった高校時代のスタジャン、28年後に兄が古着屋で発見

高校時代のスタジアムジャンパーがコンディションも良好な状態で見つかった/KNXV

2021.12.06 Mon posted at 07:43 JST

(CNN) ジェッド・モトリーさんは28年前、米アリゾナ州スコッツデールのシャパラル高校でフットボールクラブに所属し、代表チームでプレーしていた。スタジアムジャンパーほど、自分がプレーするスポーツや高校への究極の誇りを感じさせるものはなかったが、モトリーさんはジャンパーを持っていなかった。

モトリーさんはその年、ジャンパーを買おうと店に行き、注文に必要なものを全て選んだ。モトリーさんは「ジャンパーは自分でデザインしないといけなかった。だが完成品を見ることはなかった」と話す。

ジャンパーを受け取る時になって、母親から「お金がない」と言われたのだ。

モトリーさんは「母は本当に素晴らしい人で、できる限りのことをしてくれた。クリスマスツリーの下に借用書があったこともあった。クリスマスに借用書をもらったことがない人には、その気持ちはわからないと思う。私たちは確かに大変ではあったが、母はいつも何とかやりくりした。とても愛情深い人だった」と語った。

モトリーさんの兄ジョシュさんは11月3日、高校から約290キロ離れたパイントップの古着屋に弟のスタジアムジャンパーが25ドル(約2800円)でつるされているのを偶然発見した。モトリーさんの推定では、ジャンパーは当時300ドルしたので、当時の価格とは雲泥の差があった。

正しい値段

モトリーさんは「母は私が知っている人の中で最も信心深い人の一人で、いつも『あの世からサインを送る』と言っていた。母は2012年に亡くなったが、これまでにサインが送られたことはなかった」と振り返る。

ジョシュさんは、ミュージシャンとして全米を回った後、数年前にパイントップに引っ越した。ジョシュさんはCNN系列局のKNXVに、地元の古着屋の店内を歩いていたら、真っ赤なジャンパーを見つけたと語った。

ジャンパーには、左ポケットの下に「Jed」、右ポケットの下に「94」、右腕にフットボールと「WR」の文字と数字の「1」のワッペンが縫い付けられていた。また、ジャンパーの左上には大きな「C」の文字の中に「シャパラル」と書かれたワッペンがあった。

モトリーさんは兄と電話越しにこの瞬間の感動を分かち合った。「28年後の今、この価格は文句無しだ」(モトリーさん)

兄と同じくモトリーさんもミュージシャンで、現在はロサンゼルスに住んでいる。モトリーさんはジョシュさんからジャンパーを直接受け取るためだけにアリゾナ州に飛び、兄弟は数年ぶりに再会を果たした。

ジャンパーの状態から判断して「誰も着ていないと思う」とモトリーさん。ポケットには「検品済み」のタグが残っていた。

ジェッド・モトリーさん(右)と兄のジョシュさん

モトリーさんは「この1週間、母がずっと一緒にいてくれたような気がする。この自然な高揚感がいつまでも続けばいいのに」と話した。

2週間のアリゾナ訪問を終え、ロサンゼルスに戻ったモトリーさんは、機会があるたびにこのジャンパーを着ている。自身のバンド「フィード・ザ・キティー」のショーでもジャンパーを着用しているという。

「ミュージシャンとして人々を幸せにすることが大好きで、この1、2週間は幸せだった。皆が喜びの涙を流し、私のことを喜んでくれている。それにつられて私も涙を流した」(モトリーさん)

ジャンパーが発見されて以来、モトリーさんの元フットボールチームの仲間たちは、ジャンパーを買うお金がなかったことをなぜ言わなかったのかと尋ねてきた。

モトリーさんは、それについて「恥ずかしかったんだ。スコッツデールでは周りの皆がお金に余裕があるように感じたが、私は母子家庭の出身だった。彼らの服を借りたり、高級車に乗ったり、家に遊びに行ったりできたのは楽しかったけど、(自分の家は)ちょっと違った」と語った。

店から店へ

古着屋のマギー・ヒースさんによると、ジャンパーを寄付したのはメサに住む男性だった。メサはパイントップから約280キロ、シャパラル高校から約32キロ離れている。

ヒースさんによると、その男性の奥さんが亡くなり、さらに新型コロナウイルスのために店を開けることができなくなった。「彼はジャンパーやパッチを積んだトレーラーを運転して、店に寄付してくれた。名前や番号の入ったジャンパーが単なるサンプル品ではないことに気づいたのは、何百枚も売った後だった」(ヒースさん)

ヒースさんは、ジョシュさんが店内で弟のジャンパーを発見した時の様子について、「仰天していた」と振り返った。

スコッツデール統一学区のナンシー・ノーマン氏はCNNに対し、「こうした品物は非常に感傷的な価値がある。彼がシャパラル高校のフットボールチームの一員として過ごした日々の楽しい思い出がよみがえることを願っている」と述べた。

ヒースさんは、店にある他のジャンパーに関しても、長い間ジャンパーを探している人たちのために提供すると話している。モトリーさんのジャンパーが発見されて以来、ヒースさんの店には電話やメールが殺到しており、丸一日かけてジャンパーやパッチの整理を行う計画だという。

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