車内で仮眠、予約便は次々に欠航――旅行者を混乱に陥れた突然の渡航制限

人けのないチェックインカウンター。渡航制限を受けて、各地で立ち往生する旅行者が出てきている/Courtesy Movin Jain

2021.11.30 Tue posted at 16:33 JST

(CNN) 休暇で南アフリカを訪れたミック・スターラさん(73)は、8日間の滞在が暗転し、英国に戻ろうと必死になって、空港ターミナル内のレンタカーの中で寝泊まりする羽目になるとは思ってもみなかった。南アフリカで発見された新型コロナウイルスの新しい変異株「オミクロン株」。世界各国が急遽(きゅうきょ)、渡航制限に踏み切る中で、突如として帰国できなくなった旅行者が足止めされ、帰国の見通しが立たない中で混乱に巻き込まれている。

ミックさんは妻のジャンさん(73)と共に今月21日、英ロンドンのヒースロー空港とヨハネスブルクのO・R・タンボ国際空港を11時間で結ぶ直行便に搭乗して南アフリカに到着。29日に同じ経路で英国に帰国するはずだった。ところがブリティッシュ・エアウェイズは25日、同便の欠航を発表した。

強い感染力をもつ可能性が指摘されるオミクロン株が南アフリカで発見されると、世界各国が新たな渡航制限に踏み切り、パンデミック(世界的大流行)の次の展開に対する懸念が強まった。新型変異株を最初に発見したのは南アフリカの専門家だが、同国で発生したのか、他国から持ち込まれたのかは分かっていない。

南アフリカの保健当局が新たな変異株の発見を発表した数時間後、旅行者は何の予告もなく足止めされる状況に陥った。

新たな変異株は既に十数カ国で見つかっている。ほとんどの症例は、アフリカから戻った旅行者から検出された。

南アフリカを訪れたスターラさん夫妻はクルーガー国立公園近郊のサファリロッジに滞在。ミックさんはCNNに「素晴らしい3日間を過ごした後に、大変な事態になった」と説明した。

夫妻は28日、車で8時間かけてO・R・タンボ国際空港に戻った。新たに予約し直したモーリシャス行きの便に搭乗する予定だった。渡航に必要なPCR検査を済ませた2人は、出発時刻まで空港ターミナル内のレンタカーの中で仮眠を取った。

休暇で南アフリカを訪れたスターラさん夫妻

ところが同便も出発直前で欠航になった。モーリシャスも他国に追随してアフリカ南部の国からの便や渡航に制限をかけたためだった。ミックさんは再びレンタカーを借り、2時間半かけて宿泊施設にたどり着いた。出発できるのは最も早くて12月7日になると告げられたことから、その日までここに滞在する予定だ。

ミックさんは「私たちは2人とも、孫たちと一緒にクリスマスを過ごせないかもしれないと心配している。まだ困難な状況を脱したわけではない」「妻は精神的にボロボロになっていて、私もそれに近い。それでも少しは落ち着いた」と話す。

10日間の休暇を過ごす予定でインドのベンガルール(バンガロール)から南アフリカを訪れたモービン・ジェインさん一家も、スターラさん夫妻と同じような状況に陥った。

カタールの首都ドーハを経由して19日にヨハネスブルクに到着した一家は、カタール航空便で29日に帰国する予定だった。

28日夕、予約していた便に搭乗するためO・R・タンボ国際空港に到着した一行が目にしたのは、無人のチェックインカウンターと、閉ざされた航空会社のオフィスだった。

「私たちは足止めされ、自費で南アフリカ滞在を延長するしかなくなった」というジェインさん。航空会社からは何の連絡もなかったといい、「いつまでこんなことが続くのか分からない」と不安を募らせる。

インドから南アフリカを訪れたジェインさん一家

インドでの仕事は休みを取っており、ノートPCは持ってこなかったので仕事もできない。勤務先は今のところ理解を示してくれているものの、1週間以上も長引けば、どれくらい柔軟に対応してもらえるかは分からないという。

インド大使館は、足止めされた国民に書類の提出を促しており、旅行代理店からは、チャーター便が準備できれば連絡すると告げられたという。ジェインさんによると、一家の観光ビザはあと2日で期限が切れる。

米ノースカロライナ州在住のローレン・ケネディさんと娘のライリー・キャンベルさんは、2020年4月から休暇を楽しみにしていた。この時の旅がパンデミックで延期になり、今回ようやく実現したアフリカ旅行だった。

2人は旅の終盤、ザンビアから南アフリカの空港に到着した直後に、新たな変異株のために渡航禁止が始まったというニュースを知った。米国には欧州を経由する便で帰国する予定だったが、新たな渡航制限のためにその計画が崩れたとCNN提携局のWRALに話している。

「私たちがターミナルに到着した時には既に大騒ぎになっていて、誰もが便の再予約を試み、私たちも混乱に押し流された。私たちは多分、10便ほど予約したが、どれも欠航になるか、搭乗を許されなかった。ヨハネスブルク発欧州経由の便はほとんどが欠航になり、渡航禁止が時間ごと、日ごとに増え、欧州のパスポートを持たない旅行者に対して各国が国境を封鎖していた」(ケネディさん)

ケネディさんは「今夜は米国行きの直行便がある。事態は刻々と変化しているので、私たちはただ、落ち着いて、辛抱しようとしている。自分たちが一緒にいられて、安全で、健康で、昨日受けた新型コロナの検査も陰性だったことに感謝している」と話している。

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