英仏海峡の移民ボート沈没、英仏間の言葉の応酬が激化

遺体が運ばれたとみられる倉庫に男性が担架を運ぶ。少なくとも移民27人が亡くなった=24日/PA/Sipa

2021.11.26 Fri posted at 08:57 JST

(CNN) 英仏海峡をボートで渡ろうとした移民少なくとも27人が死亡した事故を受け、英国とフランスの指導者の間で言葉の応酬が激しさを増している。移民危機をめぐる緊張が表面化した形だ。

24日に起きた事故では、英国に向かっていたゴムボートがフランス沖で沈没し、移民が溺死(できし)した。英仏海峡における近年最悪規模の人命の喪失となった。

フランス検察によると、死者の内訳は男性17人、女性7人、10代の可能性のある若者が3人。現場に到着したフランスの「海難救助全国協会(SNSM)」の隊員は、妊娠した女性の遺体を目撃したと証言した。


警察が救出作業に使われているカレー港のエリアを封鎖/Kiran Ridley/Getty Images

フランス北部カレーの港湾責任者はCNNに対し、犠牲者の大半はイラク国籍保有者だと語った。クルド人自治区のバルザニ首相は25日、イラクのクルド人も犠牲になったとみられると説明。当局が犠牲者の身元特定を進めているとツイッターで明らかにし、遺族に弔意を示した。

フランスのマクロン大統領と英国のジョンソン首相は、恐ろしい悲劇だとの認識を表明。マクロン氏は、フランスは英仏海峡を墓場にはさせないと述べた。

フランスのマクロン大統領

両首脳は移民の渡航を防ぐ共同の取り組みを強化することで合意したものの、相手方の対策が不十分だと互いに批判をしている。

フランス側が発表した24日夜の英仏首脳による電話会談の内容によると、マクロン氏はさらに踏み込み、ジョンソン氏に対して移民危機を国内向けに政治利用するのをやめるよう促した。

ジョンソン氏は、さらなる犠牲者を防ぐためにすぐに取られるべき5つの対策を書簡でマクロン氏に伝えたとツイッターに投稿。共同パトロールなども含む内容で、「英国に行こうとする人々がすぐに戻される状況になれば、密航業者の手に命を委ねようとする人々の動機はかなり減る」と述べた。


遺体が運ばれたとみられる倉庫に男性が担架を運ぶ。少なくとも移民27人が亡くなった=24日/PA/Sipa

25日にも政治家の間で非難合戦が続いた。

フランスから多くの移民が到着する英ドーバー選出のナタリー・エルフィック議員はCNNに対し、英仏海峡での事故は「完全に予測できた」との見方を示し、これはフランスが解決すべき国境警備の問題だと位置づけた。

カレーの病院前で記者団に話をするダルマナン内相

エルフィック氏はまた、「人々はフランスで安全な状態にある。安全を保つ最善の方法は彼らを陸地にとどめておくことであり、英仏海峡のただ中で密航業者の手に委ねることではない」とも指摘。フランスは「人々がボートに乗り込むのを止めずに傍観している。この点でフランス側の政策が変化する必要がある」と述べた。

一方、フランスのダルマナン内相は欧州の隣国に支援強化を求め、25日にはラジオ局RTLに対し、フランスだけが密航業者と闘うわけにはいかないと説明。ベルギーやドイツ、英国の名前を挙げ、こうした国が国際的な密航業者との闘いでフランスを支援する必要があると述べた。

英国がこれほど多くの不法移民を引きつける理由については、英国の出入国管理方法や好調な労働市場に言及し、「英国では明らかに入国管理のあり方に誤りがある」と指摘している。

英仏海峡の移民ボート沈没、27人死亡

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