ジョギング中の黒人男性殺害事件、白人の被告3人に有罪評決 米

グレゴリー・マクマイケル被告(写真中央)=23日、米ジョージア州ブランズウィックの裁判所/Octavio Jones/AP

2021.11.25 Thu posted at 10:51 JST

米ジョージア州ブランズウィック(CNN) 米ジョージア州ブランズウィックの裁判所の陪審団は24日、ジョギング中だった黒人男性、アマド・オーブリーさん(25)が殺害された事件で、被告の白人の男3人に殺人罪などで有罪評決を下した。

陪審団は白人男性9人、白人女性2人、黒人男性1人から構成された。8日間にわたる証人尋問では23人が証言台に立ち、その後2日間に渡って11時間あまり評議が行われた。

オーブリーさんの両親は評決後、裁判所の前で検察や支持者をたたえて感謝の言葉を述べた。昨年2月に発生したこの事件は全米で怒りを招き、人種差別による他の犯罪にも目が向けられるきっかけとなった。

オーブリーさんを射殺したトラビス・マクマイケル被告は悪意ある殺人などすべての罪状で有罪になった。トラビス被告がオーブリーさんを追い回して運転するトラックの荷台に武装して乗っていた同被告の父親グレゴリー・マクマイケル被告、マクマイケル親子とともに別の車で追いかけ事件を撮影していた近隣住民のウィリアム・ブライアン・ジュニア被告は重罪の殺人罪などで有罪となった。

オーブリーさんの母親のワンダ・クーパージョーンズさんは、これでオーブリーさんが安らかに眠れると語った。

被告側弁護士は控訴の意向

量刑言い渡しの日程は未定。検察は仮釈放なしの終身刑を求めている。

グレゴリー被告やトラビス被告の弁護士らは控訴する方針。弁護士の一人は両被告は正しいことをしたと考えており、評決の結果は残念だと語る一方で、「オーブリー家にとって祝いの日であることはわかっている」とも述べた。

マクマイケル親子とブライアン被告は連邦裁判所でヘイトクライム(憎悪犯罪)でも起訴され、権利の妨害と誘拐未遂の罪で2月に事実審理が行われる。被告らは無罪を主張している。

グレゴリー・マクマイケル被告(写真中央)=23日、米ジョージア州ブランズウィックの裁判所

オーブリーさんの母は3人の被告や警察、検察に対して民事訴訟も起こしている。

オーブリーさんは昨年2月23日、ブランズウィック郊外で射殺された。被告らはオーブリーさんが犯罪を犯したと思ったと供述。裁判に提出された証拠には、オーブリーさんを道路上で追い回し、オーブリーさんが何度も避けようとする様子が映っていた。マクマイケル親子は武装して1台のトラックに同乗し、ブライアン被告も追跡に加わりその様子を撮影した。オーブリーさんは武器を持っておらず、徒歩だった。

映像には、トラビス被告がトラックを出て、オーブリーさんと対峙(たいじ)する様子が映っている。その後トラビス被告はオーブリーさんと取っ組み合いになり、オーブリーさんを射殺した。グレゴリー被告はその様子を荷台から見ていた。

被告らは無罪を主張した。マクマイケル親子は私人逮捕をしようとして自己防衛で行った行動だと主張。ブライアン被告は殺害に加わっていないと述べた。

元警官で検察事務所の捜査官も務めたグレゴリー被告は当局に対し、オーブリーさんと息子がショットガンを巡って争いになり、襲われた後に息子が発砲したと述べた。

トラビス被告も裁判で、ショットガンをつかまれたので自己防衛のために発砲したと証言した。だが検察による反対尋問では、当時捜査官に対して、オーブリーさんが銃をつかんだかはわからないと伝え、また親子とも私人逮捕に言及していなかったことを認めた。トラビス被告は説明の矛盾について、事件直後は混乱していたと述べた。グレゴリー被告とブライアン被告は証言を拒否した。

全米から非難の声

事件は当初、検察官2人が警察に逮捕を行わないように指示していた。だが2カ月後にブライアン被告の映像が公開されると全米から非難が殺到。同年5月7日にマクマイケル親子、その2週間後にブライアン被告が逮捕された。

グレゴリー被告は、オーブリーさんが近所で発生した一連の窃盗事件の犯人だと親子で考えていたと警察に伝えた。だが警察は、直近の約2カ月で起きた窃盗事件は、施錠されていないマクマイケル家の車から銃が盗まれた1件だけだったと明らかにした。

オーブリーさんの母親(写真右から2番目)ら=24日、米ジョージア州ブランズウィックの裁判所前

グレゴリー被告はまた、オーブリーさんが建設中の家に立ち入った疑いがあるとも述べた。その家の家主はCNNに対し、監視カメラの映像にオーブリーさんが犯罪を犯した形跡はないと言及。裁判では、マクマイケル親子に代わりに行動を起こすように頼んだことはないとも証言した。

トラビス被告はオーブリーさんが武装せず、また被告を脅すような言動をしていないことを認めた。オーブリーさんが自分に応答せず、会話に興味を示さなかったと語った。

州の捜査官は昨年の予備審問で、ブライアン被告とトラビス被告がソーシャルメディアなどで人種差別的な発言をしていたと述べた。また、ブライアン被告が警察に対し、トラビス被告がオーブリーさん殺害後に人種的な悪口を言っていたのを聞いたと伝えたことも証言した。

州の捜査官は「オーブリーさんは追跡され、これ以上走れないところまで走り、後はショットガンを持った男に背を向けるか、ショットガンを持った男と素手で戦うかの選択だったのだと思う。彼は戦うことを選んだ」との見解を示した。

陪審団の構成に異議

裁判では陪審団に黒人が1人しか選ばれず、検察や家族から異議が申し立てられた。グリン郡の人口比率は白人が69%、黒人が27%。

陪審員の選任には2週間半かかった。1000人に召喚状を出したが、半数以下しか姿を現さなかった。最終的に12人の陪審員と3人の補欠陪審員が選ばれた。

検察側は弁護側が黒人陪審員を偏って排斥していると訴えたが、裁判所は人種を越えて当該の陪審員が外されるべき正当な理由が提示されたとして、この陪審団で裁判を進めるとの決定を下した。

陪審員の構成については、弁護側からも、人口比率に比べて非大学卒の高齢の白人が少ないとの問題が提起されていた。

米黒人射殺、被告3人に有罪評決

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