(CNN) 多額の新型コロナウイルス救済金をだまし取ったとして有罪を言い渡された米カリフォルニア州の夫婦が、行動監視のための電子ブレスレットを壊し、3人の子どもを残して自宅から逃走した。裁判所は本人不在のまま禁錮刑を言い渡し、米連邦捜査局(FBI)は2人の行方を追っている。
逃亡しているのはリチャード・アユバジャン被告(43)と、妻のマリエッタ・テラベリアン被告(37)。弁護士によると、夫婦は13歳と15歳、16歳の3人の子どもに宛てて、タイプライターで打った手紙を残していた。
「いつかまた会える」「これはさよならではない。でも互いにしばらく離れ離れになる」という内容だった。
夫婦は6月に有罪を言い渡され、8月に自宅から逃亡した。3カ月たった今も行方は分かっていない。
裁判所は15日、本人不在のままアユバジャン被告に禁錮17年、テラベリアン被告に同6年の判決を言い渡した。検察によると、2人は小規模事業者のための救済金2000万ドル(約23億円)以上を詐取したとされる。
両被告とアユバジャン被告の弟のアーサー・アユバジャン被告(41)は今年6月、詐欺や資金洗浄などの罪で有罪判決を言い渡された。
裁判書面や裁判で提出された証拠によると、被告らは身分を偽って死者や交換留学生などになりすまし、米政府の小規模事業者向け救済融資約150件をカリフォルニア州サンフェルナンドバレーに虚偽申請したとされる。
虚偽申請を裏付けるため、偽の身分証明書や偽造した納税申告書、給与記録なども提出していた。
夫婦とアーサー被告、および共謀者5人は、この救済金を使ってカリフォルニア州南部の3都市で豪邸を購入し、金貨やダイヤモンド、家具、高級腕時計、ハーレーダビッドソンのバイクといったぜいたく品を購入していた。
有罪を言い渡された時点で3軒の住宅や高級品、銀行口座、約45万ドルの現金などは差し押さえられた。
アユバジャン被告が首謀者だったのかどうかは不明だが、これまでに有罪が確定した8人の中で、同被告は最長の禁錮17年を言い渡された。残る7人は6年以下の禁錮で、弟のアーサー被告は5年だった。
15日の判決の中で米連邦地裁のスティーブン・ウィルソン裁判官は、アユバジャン被告を「法を顧みない冷血詐欺師」と形容した。
3人の子どもは法廷で、両親とおじに対する量刑の言い渡しに立ち会った。
アユバジャン、テラベリアン両被告の行方は今も分からず、FBIが2万ドルの賞金をかけて逮捕につながる情報の提供を募っている。
アユバジャン被告側のアシュウィン・ラム弁護士はCNNの取材に対し、検察側が同被告の関与を誇張しすぎていると訴えた。8月にアユバジャン被告が逃亡して以来、同被告とは話をしていないという。
同弁護士によると、家族は夫婦が別の共謀者によって拉致された可能性があると考えているという。
「この事件には何十人も共謀者がいるとされるが、起訴されたのは数人にすぎない。もし本当に首謀者なら、彼を黙らせたいと思う者がいるはずだ」とラム弁護士は主張する。
夫婦が子どもたちに残した手紙には、家族に危険が及ぶことを避けるために身を隠すといった内容が書かれていたという。
3人の子どもたちは、祖母や裁判所が任命した保護官が面倒を見ている。