寮にかびやゴキブリ繁殖、学生が抗議の野営 米歴史的黒人大学の窮状映す

歴史的黒人大学(HBCU)のハワード大学で、学生たちが老朽化した建物のかびや害虫などの問題を訴えて抗議のテント生活を続けている/Drew Angerer/Getty Images

2021.11.15 Mon posted at 16:37 JST

(CNN) 米首都ワシントンにある歴史的黒人大学(HBCU)のハワード大学で、寮に住む学生たちが老朽化した建物のかびや害虫などの問題を訴え、抗議のテント生活を続けている。

2年のジャスミン・ジューフさんは寮の自室で数週間前にかびが繁殖しているのを見つけて以来、せきや頭痛などアレルギー反応の症状に悩まされるようになったという。

9月にかびの問題を報告したが対応してもらえなかったことから、抗議のために10月から同じような境遇にある学生数人とともに、大学のキャンパス内にテントを張って野営を始めた。

一部の学生は、ゴキブリやネズミの繁殖、浸水、寮内でWi―Fiが使えないといった問題も訴えているが、大学側が対応を怠っているとジューフさんは憤る。

ハワード大学は100年の歴史を持つ歴史的黒人大学の名門校。学生や公民権運動指導者によると、歴史的黒人大学は白人中心の教育機関に比べて予算が少ないことが多く、校舎の老朽化などの問題が広がっているという。今回の抗議運動は、クラーク・アトランタ大学、モアハウス大学、スペルマン大学といった歴史的黒人大学の学生の支持も集めている。アトランタでも先月、学生たちが劣悪な生活環境や寮の不足を訴えて抗議運動を展開していた。

1カ月にわたって続くハワード大学の抗議運動は全米の公民権運動指導者の注目を集め、ジェシー・ジャクソン師、ウィリアム・バーバー師、マーティン・ルーサー・キング3世氏などが支持を表明した。ジャクソン師は今月、キャンパスを訪問して学生側と大学側との仲介を試みた。

学生側は大学側に対し、話し合いの場を設けるか、タウンホールミーティングを開いて建物の修理に向けた包括的な計画を提示するよう求めている。学生寮の管理と運営を行っている会社との契約解除を求める署名嘆願には4500人以上の署名が集まった。

歴史的黒人大学(HBCU)のハワード大学で、学生たちが老朽化した建物のかびや害虫などの問題を訴えて抗議のテント生活を続けている

学生との対話はまだ実現していないものの、ハワード大学のウェイン・フレデリック学長は今月5日、寮の老朽化に関する苦情を認め、一部の問題については解決に努めていると説明した。

学長側は、係争が続いていることを理由にCNNの取材には応じなかった。

黒人指導者からは、政府の助成金拠出は歴史的黒人大学を優先すべきだとの声も出ている。米ブルッキングス研究所によると、歴史的黒人大学は州の予算の少なさや、黒人の所得の低さに起因する卒業生からの寄付の少なさのために資金不足状態にある。

米政府監査院(GAO)の報告によれば、歴史的黒人大学の寄付金の平均は学生1人当たり1万5000ドルと、非歴史的黒人大学の同41万ドルに比べて大幅に少ない。

ジョー・バイデン大統領は米議会で審議中の「ビルド・バック・ベター(より良く建て直す)法案」に、歴史的黒人大学の教育課程やインフラ予算として20億ドルを計上している。

米下院のナンシー・ペロシ議長によると、同法案は今月25日までに下院を通過す見通し。その後上院で審議される。

ハワード大学出身のカマラ・ハリス副大統領は、同大学の問題についてコメントを避けている。先の演説では歴史的黒人大学について「我が国の未来にとって不可欠」と述べていた。

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