見えない飼い主を耳だけで追跡 猫の空間認識能力、実験で実証

猫は飼い主の声で飼い主の位置を把握しているとする研究結果が発表された/Saho Takagi

2021.11.11 Thu posted at 12:35 JST

(CNN) じっと動かずにいる猫は、たとえ飼い主の姿が見えなくても、声などを手掛かりとして心の中で飼い主の存在を追っているのかもしれない――。そんな研究結果が発表された。

論文の筆頭筆者で京都大学の博士課程に在籍していた高木佐保氏は、以前から猫の聴覚に興味があったという。常に猫と暮らしてきた同氏だが、特に大好きなのは耳だった。猫の耳は感度が高く、さまざまな方向に動かせる。

高木氏は、猫が片耳だけ後ろに倒して後ろの音を聞いている姿を見て、この猫がその物音を頼りにたくさんのことを考えているに違いないと感じたという。そこで今回は、猫が物音から飼い主の居場所を空間的に把握できているのかどうかを調べることにした。

実験は家庭や猫カフェで実施。スピーカーを使って飼い主が猫の名を呼ぶ声を流し、姿が見えない飼い主の声に対して猫がどう反応するかを観察した。

スピーカーは、それぞれ猫には見えない離れた場所に置き、特に飼い主の声が1つの場所から別の場所へと瞬間移動するかのような状況で、猫の反応を観察。動物行動学の専門家ではないグループが、耳や頭の動きをもとに、猫の驚きの程度を4段階で評価した。

実験の結果、猫は飼い主が別の場所に瞬間移動したかのように思えた時に、驚いた様子を見せることが分かった。研究ではこの結果から、猫の社会空間認識能力、つまり音などを手掛かりとして他者の居場所を心の中で思い描く能力が証明されたと結論付けている。

猫は一般的に、犬ほど飼い主に関心を示さないと思われがちだが、実は見えない飼い主の存在を心の中で思い描いていることが分かったと高木氏は解説する。

スピーカーからの飼い主の声を聞く実験中の猫

猫以外にも、ベルベットモンキーやミーアキャットのような動物はこうした感覚をもっている。音などの刺激に基づき画像を思い描くことのできる能力は、複雑な思考を表していると研究者は解説する。視界が悪い中で獲物をとらえる動物にとって、この能力は特に重要だ。

これは創造性や想像力の根本となる能力だと高木氏は言い、猫は想像以上に深遠な心をもっていると思われると語った。

猫行動コンサルタントのイングリッド・ジョンソン氏によると、猫は特に高齢になると、飼い主への愛着が強まることがある。目が覚めた時に飼い主の姿が見えなかったり声が聞こえなかったりすると、寂しがる様子を見せる高齢猫もいるという。

ジョンソン氏は今回の研究について、「猫が飼い主との間に絆を築くことができ、その飼い主との関係に安心感を感じていることを示す素晴らしい実例」と評価する。

これまでの研究で、猫には飼い主の声と他人の声を聴き分ける能力や、感情を認識できる能力があることも分かっている。

猫は寝ている時間が多く、ただ寝ているだけだと人間は思いがちだが、実はたくさんのことを考えているのかもしれないと高木氏は話している。

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