(CNN) 絶滅の瀬戸際にあるキタシロサイの繁殖を試みている研究チームが、世界で生き残った最後の2頭のうち1頭を、繁殖プロジェクトから引退させると発表した。
引退させるのは32歳のメスの「ナジン」。「倫理的」な理由から卵子の採取を中止する。これで繁殖プロジェクトに残されたキタシロサイは、ナジンの娘の「ファトゥ」1頭のみとなった。
サイは密猟者に狙われて頭数が激減し、キタシロサイは絶滅の瀬戸際に追い込まれている。
ナジンはチェコのサファリパークで1989年に生まれ、個体数の回復を目指す繁殖計画の一環として2009年にケニアの保護施設に移された。
当時は娘のファトゥのほか、世界最後のオス2頭が一緒だったが、オスは14年と18年に死んだ。
オスが死んだ後も、2頭から採取した精子を使って繁殖計画は続行され、メスから採取した卵子の人工授精が行われた。しかしナジンもファトゥも出産には至らなかった。
繁殖プロジェクトを主導するドイツのライプニッツ動物園野生動物研究所は21日、倫理面のリスク評価を行った結果、極めて困難な決断をしたと発表。「ナジンの卵母細胞の採取からはわずか数個の卵子しか得られず、いずれも受精して胚(はい)となることに成功しなかった」「この結果と潜在的リスクを考慮して、ナジンに対する今後の介入をやめ、卵母細胞の提供者としての使用を中止することを決めた」と説明している。
今後も、例えば幹細胞のアプローチのために組織サンプルを採取するなど、体への負担を最小限に抑える方法でナジンを繁殖プロジェクトに残す方針。
研究チームはナジンの生殖器官に小さな良性の腫瘍(しゅよう)が複数見つかったことも明らかにした。