暴力的なパートナーとの関係解消に43万円支給、家庭内暴力の問題に苦慮する豪州

2020年の国際女性デーに参加した女性たち=豪南東部シドニー/Lisa Maree Williams/Getty Images

2021.10.20 Wed posted at 10:58 JST

豪ブリスベン(CNN) オーストラリア政府は1回限りの給付金によって、人々が暴力的なパートナーとの関係を解消する支援に乗り出している。

19日以降、パートナーからの暴力の被害者は5000豪ドル(約43万円)の支給を申請できる。これは現金でも、授業料などの経費に対する直接支払いの形でも受け取れる。

今回の仕組みはすべてのジェンダーに適用されるが、申請者の大部分は女性が占めると予想される。政府のデータによれば、オーストラリアでは女性がパートナーに殺害される事件が9日に1人のペースで起きている。

給付金の支給は女性の権利の擁護団体などからは歓迎されているものの、オーストラリアにおける家庭内暴力の問題の根本的原因に取り組むものではないとの指摘も出ている。

女性の権利擁護や完全なジェンダー平等を掲げるビクトリアン・ウィメンズ・トラスト(VWT)の責任者を務めるメアリー・クルック氏は、オーストラリアが国として「男性的な」文化に関するより広範な議論を行う必要があると主張。家庭の長のほか政府や企業のトップの役職には男性が就くケースがほとんどだと強調した。

そのうえで、女性の方が実家を出るのを余儀なくされる理由についても問いかけが必要だとの見方を示した。

豪州では今年に入ってからも女性への権利を求める抗議活動が開催された

オーストラリアは世界経済フォーラム(WEF)がまとめた今年のジェンダーギャップの国際ランキングで50位と、米国、英国、フランス、ニュージーランドよりもはるかに低い順位にとどまった。こうした状況はパートナー間の力関係が対等とならず、女性が経済的に弱い立場に置かれやすい一因となっている。

政府は5月、ジェンダー間の賃金格差が過去最低の13.4%になったと報告。一段の格差縮小に取り組むとしたが、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)による都市封鎖の中で、失業や労働時間カットの損害を被ったのは女性の方が多かった。

また多くの国と同様、パンデミックは家庭内暴力の増加も引き起こしている。政府によれば、パンデミックの間に現在の、もしくはかつてのパートナーから身体的または性的暴力を受けた女性たちのうち、3分の2はコロナ禍の中でそうした暴力が始まった、あるいは増加したと回答した。

19日、国内最大の人口を抱えるニューサウスウェールズ州は、4億8400万豪ドルを投じて女性のための避難所75カ所の設置などに充てると発表した。家庭内暴力への取り組みとして一度に支出する金額としては過去最大規模になる。

当該の避難所には裁判に遠隔で出廷するためのオーディオビジュアルルームや共有のキッチン、遊び場などが備え付けられている。

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