タリバンに抵抗して職場へ、学校へ カブールの女性たち

タリバンによる女性への締め付けに対し、横断幕を掲げて抗議する女性活動家ら/Brent Swails/CNN

2021.10.05 Tue posted at 17:30 JST

アフガニスタン・カブール(CNN) アフガニスタンで政権を握ったイスラム主義組織タリバンが女性への締め付けを強めるなか、首都カブールでは一部の女性たちがこれに抵抗して職場や学校に戻り、果敢に抗議の声を上げている。

アティファ・ワタニヤルさんはカブール近郊の学校で英語を教えている。この学校ではタリバンの政権掌握より前の5月初めに爆弾テロが起きた。

学校の正門にいたワタニヤルさんの目の前で爆発が起きた。生徒たちが逃げ出す間に2回目、3回目の爆発が続き、少なくとも85人の死者が出た。その多くが10代の少女たちだった。

あれから5カ月。事件の日と同じ場所に立つワタニヤルさんのそばを女子生徒たちが通り過ぎ、廊下へ入っていく。にぎやかな声が響く校内の壁画には、「未来はもっと明るい」と書かれていた。

「私たちに何ができるだろう。街では毎日、タリバンの姿を目にする。とても恐ろしい」と、ワタニヤルさんは話す。

事件後に学校が再開してから数週間後の8月に、タリバンが「アフガニスタン・イスラム首長国」の樹立を宣言した。その1カ月後には男子生徒だけを対象に高校の授業を再開。6年生以上の女子については再開前に「安全な通学手段」を確立する必要があると説明した。

タリバンは1996年に旧政権が発足した時も同様の口実を掲げたが、2001年の政権崩壊まで女子が学校へ戻ることはなかった。

ワタニヤルさんの授業にも年長の生徒は出席できない。今は、5年生以下の少女たちに少なくとも教室の中では夢を抱いてほしいと願いつつ、教壇に立っている。

カブール近郊の学校で5年生以下の女子生徒を教えるワタニヤルさん

爆弾テロで負傷した生徒の1人、サナム・バフニアさん(16)は、事件後に勇気を振りしぼって学校へ戻っていた。勉強熱心だった級友をテロで亡くし、「彼女の魂の平安のために、私が勉強して国をつくらなければ」と決意したからだ。

タリバンの命令で登校できなくなった今は、自宅で教科書を読む毎日だ。得意な教科は生物学。だが歯科医になる夢はもうあきらめた。

バフニアさんは声を震わせ、涙ながらに「タリバンのせいでこんなことになった。私の魂は消え、夢は葬られてしまった」と訴えた。

タリバンは一部の職場への女性の出勤を禁止し、男性のみで構成された暫定政権に抗議する女性たちのデモを鞭(むち)や棒で制圧した。

カブール北西部の町では、町内の美容院の看板にあった女性の顔がすべて黒く塗りつぶされたり、消されたりしていた。

美容院の店内にいた女性たちが匿名を条件に語ったところによると、タリバンはこの町でデモ隊を排除した後、女性の描写を撤去するよう命じ、女性たちに全身を覆う衣服「ブルカ」を着けて家にいるよう言い渡したという。

そんななかでも、一部の女性活動家はデモを続けてきた。先週も少人数の女性がデモに集まったが、タリバン部隊が大挙して出動し、「教育は人間のアイデンティティー」「私たちの本を焼くな、学校を閉めるな」と書かれたプラカードを取り上げて威嚇射撃を行った。

タリバンがカブールに設置している情報機関の責任者は、女性グループがデモの許可を取っていなかったと主張した。

CNNの記者が同責任者に、教育の権利を求める小規模なグループをどうしてそこまで恐れるのかと尋ねたところ、「私は女性を尊重し、女性の権利を尊重している。私が女性の権利を支持していなければ、あなたはそこにいられないだろう」という答えが返ってきた。

度重なる脅迫を受けても活動家のサハル・サヒル・ナビザダさんは抗議デモを続ける

だが抗議デモへの弾圧はほかにもたびたび報告されている。主催者の1人、サハル・サヒル・ナビザダさんはデモの現場へ向かうたびに、あらゆる事態を覚悟するという。

「私自身が、あるいはほかに2~3人の女性が死んだりけがをしたりするとしても、私たちは後に続く世代に道を開くためにリスクを受け入れる。少なくとも私たちを誇りに思ってくれるはずだ」と、ナビザダさんは話している。

タリバンの支配が始まってからしばらくの間は家にこもっていたカブールの女性たちも、少しずつ公の場に戻り始めた。

1年前に夫を亡くした5児の母、アルゾ・ハリクヤルさんも、職場に復帰した女性の1人だ。夫が殺害された後、残されたのは1台の乗用車だけ。追い詰められて「これしかない」と始めたのがタクシー運転手の仕事だった。

タリバンの支配下で女性が運転を続けるのは難しくなってきた。ハリクヤルさんはよく知る町だけを走り、女性や家族連れの客を選ぶようにしている。リスクは十分承知しているが「ほかに選択肢はない」という。「時々タリバンの検問所を見かけて、ルートを変えることもある。それでも子どもたちのためにリスクを受け入れる」と語った。

タリバン支配下のカブール、女性たちが直面する現実

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