「世界一危険な鳥」ヒクイドリ、1万8千年前には人類が飼育か

ヒクイドリは攻撃的ではあるが、「刷り込み」を起こしやすいため、世話をして成鳥のサイズまで育てるのは難しいことではないという/Shutterstock

2021.09.29 Wed posted at 06:55 JST

(CNN) 人類が最も早くに飼育していた鳥は、長い刃物のような足指から「世界一危険な鳥」と呼ばれることが多いヒクイドリだった可能性がある――。査読誌「米科学アカデミー紀要(PNAS)」に27日、そんな研究結果が発表された。

ヒクイドリは陸生で攻撃性が高く、その外見はしばしば恐竜と比較される。家畜化の候補としては意外な存在だ。

だが、ニューギニアの狩猟採集民が使っていた岩窟住居2カ所から出土した1000個以上の卵の断片の化石を調査した結果、初期人類はヒクイドリの孵化(ふか)前の卵を収集し、成鳥になるまで育てていた可能性があることが判明した。ニューギニアはオーストラリアの北方に位置する大きな島で、東半分はパプアニューギニア、西半分はインドネシアの一部を構成している。


ヒクイドリのひな/Courtesy Andrew L. Mack

「この行動は鶏の家畜化の何千年も前に起きていた」。こう指摘するのは、論文の筆頭著者で米ペンシルベニア州立大の助教を務めるクリスティーナ・ダグラス氏だ。

「しかも普通の小さな家禽(かきん)ではない。巨大で怒りっぽい飛べない鳥であり、人間を切り裂くことができる」(ダグラス氏)

研究チームによると、ヒクイドリは攻撃的な行動に出ることもあるが(米フロリダ州では2019年、男性1人がヒクイドリに襲われ死亡した)、一方で「刷り込み」を起こしやすく、孵化後に初めて見たものに愛着を抱く性質を持つ。つまり、世話をして成鳥のサイズまで育てるのは難しいことではない。

ヒクイドリは鋭いつめでも知られる

現在、ヒクイドリはニューギニアで最大級の脊椎(せきつい)動物となっており、その羽や骨は装身具や礼服の材料として珍重されている。ニューギニアではヒクイドリの肉は珍味とされる。

ヒクイドリには3種が存在し、いずれも豪クイーンズランド州北部の一部やニューギニアに生息する。ダグラス氏の見方では、太古の人類は「コヒクイドリ」と呼ばれる体重20キロほどの最小の種を飼育していた可能性が高い。

研究の一環で卵の化石の放射性炭素年代測定を行ったところ、1万8000年前のものから6000年前のものまであると判明した。

一方、人類が最初に鶏を家畜化したのは9500年前以降のことだと見られている。

研究チームは結論を引き出すため、まず七面鳥やエミュー、ダチョウの卵の殻を調べた。

卵の殻の内部は、成長中のヒナが殻からカルシウムを得るにつれ変化する。研究チームは高精度の3D画像を使用したり卵の中を調べたりすることで、孵化の様々な段階における卵のモデルを作成することに成功した。

ヒクイドリには3種が存在し、オーストラリア北部の一部やニューギニアに生息している

研究チームはエミューやダチョウの卵でこのモデルを試した後、ニューギニアで見つかった卵殻の断片の化石にもモデルを適用。その結果、遺跡で見つかった卵の大半はほぼ成長しきった状態にあることが分かった。

「卵殻の大部分は後期の段階で採集されたものだった」とダグラス氏。「これらの卵殻が非常に進んだ段階にあるように見えるのは、偶然ではない」

こうした後期の卵殻から、2カ所の岩窟住居に住んでいた人々は、ヒクイドリの胎仔(たいし)が手足やくちばし、爪、羽を完全に発達させた段階で卵を採集していたことがうかがえる。

だが、人類がこれらの卵を意図的に集めていたのは孵化させるためだったのか、それとも食用にする目的だったのだろうか。その両方だった可能性があると、ダグラス氏は指摘する。

完全に発達した胎仔の入った卵を珍味とみなす地域もあるが、研究チームの分析では、当時の人はひなをかえしていたことが示唆されているという。

ダグラス氏は声明で「われわれは卵の殻を焼いた跡についても調べた」「焼いた形跡のない後期の卵殻のサンプルは十分に存在しており、食べるのではなく孵化させていたと言える」としている。

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