地下鉄や地下室が水没、大都市のネズミはどうなった? 米東海岸

米東部が大雨に見舞われ、大都市に住むネズミが多く死んだとみられている/David Dee Delgado/Getty Images

2021.09.21 Tue posted at 17:45 JST

(CNN) ハリケーン「アイダ」による豪雨で排水溝があふれ、地下鉄の駅や地下室が濁流に襲われる被害が多発した米東海岸。人的被害の大きさは判明しているが、大都市の地下深くにすみついた大勢の住民、すなわちネズミたちがどうなったのかは分かっていない。

大都市にすむネズミの数(恐らく何百万という規模)を把握するのは不可能で、ハリケーンで死んだ数も不明だが、アイダの記録的な豪雨によって、排水溝にいた多くのネズミが突然の濁流に襲われて死んだのは間違いないと専門家は推測する。

ニューヨーク市では今月1日、平年の約1カ月分に相当する雨が降った。市内のビーチには死んだネズミが打ち上げられていた。

ニューヨーク市衛生局は目撃情報や調査報告をもとにネズミの活動を記録しているが、アイダが過ぎ去った後も、これまでのところ報告件数は増えていない。やはり豪雨に見舞われたフィラデルフィアも状況は同じだった。

ネズミたちは水位が上昇しただけで根絶やしになったりはしない。米フォーダム大学のマイケル・パーソンズ氏によると、ネズミは泳ぎが得意で0.8キロ以上も泳いだり、3日連続で水かきをし続けたりすることもできる(トイレを泳いで上がってくることもある)。

しかもネズミは賢く、チャンスがあれば高い場所へ移動する。

ニューヨーク市の至る所で見かけるドブネズミは、下水道や歩道、地下の巣穴などにすみついている。このネズミは垂直に登ることもでき、建物の中に侵入すると壁を食い破ってよじ登る。それより小さいクマネズミは木登りが得意で、ニューオーリンズでよく見かける。

たとえ大規模な洪水で地下にすむネズミが大量に死んだとしても、それよりさらに多くのネズミが安全な場所に避難した可能性が大きい。

ネズミの死骸は排水溝などを通じて海岸まで運ばれることもあるという

パーソンズ氏はネズミの危機対応能力について、ネズミはアイダを生き延びただけでなく、さらに繁殖すると予想する。

パーソンズ氏の調査では、ニューヨークに生息するネズミの個体数は、新型コロナ対策に伴う飲食店の閉鎖による食糧源の変化に順応していることが判明。「弱いネズミや不運なネズミが死んだ一方で、幸運な個体や強い個体は生き延びた」とパーソンズ氏は話す。

生き延びたネズミたちはたちまち繁殖する。専門家によれば、20匹のネズミが、半年後にはゆうに数百匹になる。

テネシー大学のマイケル・ブラム教授は言う。「洪水の被災地ではネズミたちも一掃されると思うかもしれない。だが現実には、一掃されてもたちまち復活する。洪水前よりずっと数が増えることもある」

ブラム教授は2005年にニューオーリンズを襲ったハリケーン「カトリーナ」がネズミに与えた影響を調べ、8月に発表した。それによると、洪水の被害が大きく建物の多くが空き家になった地域で12年後にネズミが大量に繁殖していることが分かった。空き地の整備が行き届かない地域では、ネズミの個体数はさらに多かった。

実際のところ、洪水に見舞われた都市でネズミの個体数がどう変化するのかは、水が引いた後の対応にかかっている。

ニューオーリンズの害獣管理関連の委員会のクローディア・リーゲル氏によれば、カトリーナの時はインフラの損壊が激しく、道路に出されたごみなどの回収には時間がかかった。被災した住宅のがれきや冷蔵庫などが長期間、路上に放置されてネズミの餌場になり、ネズミが集まっていた排水溝に殺鼠(さっそ)剤をまくなどの対策を強いられたという。「我々は実際のところ、個体数の飛躍的な増加を食い止めようとしていた」とリーゲル氏は振り返った。

地下鉄の駅に水、竜巻も発生 米東部で豪雨

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。