ジャカルタ市民、清潔な空気求める訴訟でインドネシア政府に勝利

大気汚染を監視する民間機関の2020年の調べで、ジャカルタは世界で10番目に汚染が著しい首都とされた=6月9日、インドネシア・ジャカルタ/Bay Ismoyo/AFP/Getty Images

2021.09.17 Fri posted at 15:30 JST

(CNN) インドネシア・ジャカルタの裁判所は16日、同国政府に対し、清潔な空気を吸う市民の権利を守ることができていないとする裁定を下した。画期的な判断であり、これで当局は悪名高い同市の煙害対策に乗り出さざるを得なくなると期待する声が上がっている。

今回の裁定は、ジャカルタ市民32人がジョコ大統領や3人の閣僚、ジャカルタ特別州知事らを相手取り2年前に起こした訴訟を終結させるもの。裁判所は被告らが「不法行為をはたらき」、首都の大気汚染対策を行わなかったとした。

インドネシアの環境保護法では高位の当局者に対し大気の質の基準を設定することなどを求めているが、裁判では被告がこれらに違反していると判断された。

人口1050万人あまりのジャカルタは、大気汚染が深刻な世界の都市の順位で常に上位に入る。

釣りをする人=2020年6月20日、インドネシア・ジャカルタ

原告側の弁護士は今回の判断について「歴史的」と評価。「被告全員にこの裁定を受け入れてほしい。彼らもこの街に住んでいるのだから」としたうえで、裁定に従い、対策の実施と戦略的計画の策定を期待すると述べた。

被告側の弁護士はコメントを控えた。

環境保護団体グリーンピース・インドネシアの統括者で一市民として訴訟にも参加したレオナルド・シマンジュンタック氏は、裁定に先駆け、原告のうち数名がジャカルタの「汚い空気」を吸ったことで深刻な健康被害に遭っていると訴えていた。

具体的には喘息(ぜんそく)や皮膚の疾患、上気道感染症といった症状を挙げた。

通勤ラッシュで混雑した道路=2013年4月25日、インドネシア・ジャカルタ

大気汚染の実態を監視する民間機関「IQエア」の昨年の報告によると、ジャカルタでは大気汚染の指標となる微小粒子状物質(PM)のPM2.5の年平均濃度が1立方メートル当たり39.6マイクログラム。

これは世界保健機関(WHO)の定める安全基準である1立方メートル当たり10マイクログラムや、インドネシア政府による基準値の同15マイクログラムを大きく上回る。

グリーンピースのシマンジュンタック氏は、ジャカルタの道路を行き来すれば汚い空気の影響を受けるのは避けられず、「マスクも大して守ってはくれないだろう」と語った。

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