ウッドワード氏らが新著 米軍トップがトランプ氏の暴走懸念、核使用制限の秘密行動と指摘

トランプ大統領(左)とミリー統合参謀本部議長/Brendan Smialowski/AFP/Getty Images

2021.09.15 Wed posted at 08:48 JST

ワシントン(CNN) 1月6日に起きた米議会議事堂襲撃事件の2日後、米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長が、トランプ大統領(当時)が危険な軍事攻撃を命令したり核兵器を発射したりする可能性を制限するため、秘密裏に行動を取っていた――著名ジャーナリストのボブ・ウッドワード氏と米紙ワシントン・ポストのベテラン記者ロバート・コスタ氏は新著「Peril(原題)」でそう内幕を記述した。

両氏によると、事件に深く衝撃を受けたミリー氏は、「トランプ氏の精神状態が大統領選後、深刻に悪化したことを確信」した。「トランプ氏はほぼそう病のような状態となり、当局者を怒鳴り散らしたり、際限のない選挙の陰謀論に関する別の現実を作り出そうとしていた」という。

ミリー氏はトランプ氏が「暴走」する可能性を懸念し、「何が引き金になるか分からない」と側近に語っていたと、両氏は記している。

こうした状況を踏まえ、ミリー氏は異例の行動を取った。同氏は1月8日、核兵器発射を含む軍事行動の手続きを見直すため、国防総省内の自分のオフィスで秘密会議を開催。国家軍事指揮センターの軍高官に対し、自身が関与していないところで誰の命令にも応じないように指示した。

同書によると、ミリー氏は「何を言われようと、この手続きに従ってほしい。私はこの手続きの一部だ」と高官たちに説明。室内を歩きまわり一人一人の目を見て、話を理解したことを口頭で確認するよう求めたとされる。

アンドルーズ空軍基地でトランプ氏の署名を見守るミリー統合参謀本部議長=2019年12月

同書は、ミリー氏が米国民や世界各国が知らない間に米国の国家安全保障を動かす監督者の立場になっていたと指摘した上で、同氏が権限を越えて行動したと考える人もいるだろうと言及。ただ、ミリー氏自身は「自分の行動は世界の秩序に歴史的な断絶を作らず、中国や他国との偶発的な戦争を起こさず、核兵器の使用をしないための信義に基づく予防措置だと考えていた」としている。

Perilは直接の関係者や目撃者との200回以上のインタビューを基に、政権末期のトランプ氏を描く内容。トランプ氏に関するウッドワード氏の本は3冊目で、権力に固執しようとする中、タガが外れて怒りを爆発させ、顧問や側近を怒鳴り散らす人物としてトランプ氏を描いている。

同書ではそのほか、議事堂襲撃の前日にペンス副大統領(当時)と対峙(たいじ)した様子や、バイデン氏の大統領選出馬、アフガン撤退を強く推進した理由、トランプ氏に抱く感情なども記述する。CNNは9月21日の発売前に同書を入手した。

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