米同時多発テロの報道記録、「フラッシュ」終了で閲覧できず ネットの進化が追い打ちに

米同時多発テロをめぐる報道機関の双方向コンテンツがアドビの「フラッシュ」のサポート終了を受けて閲覧できなくなっている/Patrick Sison/AP

2021.09.14 Tue posted at 15:35 JST

ニューヨーク(CNN Business) 2001年9月11日に発生した米同時多発テロ。そのニュースを詳細に伝えた大手報道機関の映像や双方向コンテンツが閲覧できなくなっている。原因は、当時あらゆるウェブサイトで使われていたアドビのコンテンツ閲覧アプリ「フラッシュ」のサポート終了だった。

アドビが昨年、フラッシュのサポートを打ち切ったことで、9・11などオンラインジャーナリズムの初期に起きた重大ニュースの一部コンテンツがアクセスできなくなった。例えば9・11のニュースを伝えたワシントン・ポスト紙やABCニュースの報道をインターネット・アーカイブで閲覧すると、一部が破損した状態で表示される。9・11に関するCNNのオンライン報道も、フラッシュ終了の影響を受けていた。

ワールドトレードセンターに旅客機が突っ込んだ経緯に関する双方向の説明や、助かった人たちの様子を映像で記録した証言は、静止画像のみの表示か、最悪の場合は「アドビ・フラッシュプレーヤーのサポートは終了しました」という告知しか表示されない。

米シラキュース大学のダン・パチェコ教授は、この問題を直接的に経験している。1990年代後半にワシントン・ポスト紙のウェブサイトでオンラインプロデューサーを務め、後に当時のインターネットサービスプロバイダー大手だったアメリカ・オンラインに転職した同氏は、自らが構築にかかわった作品の一部が消滅した。

「この問題を私はインターネットの墓場と呼んでいる。文字や単純な写真以外のものは全て、新しいコンテンツ提供の手段に取って代わられて、朽ち果てる運命にある」「インターネットが朽ちるペースは、皮肉なことに、イノベーションによって一層加速していると感じる。それはあってはならないことだ」。パチェコ教授はCNN Businessにそう語った。

インターネットの片隅では、そうしたコンテンツを保全または復活させようとする取り組みも存在する。インターネット・アーカイブは、フラッシュを使ったアニメーションやゲームなどのメディアを「ラッフル」というツールで再生・保存・表示する取り組みを推進してきた。しかしそのプロセスは難しいこともあり、必ずしもフラッシュで制作されたコンテンツを全て復元できるとは限らない。

「フラッシュ」のサポート終了を伝えるページ

アドビは声明を発表し、「フラッシュのプラグインはブラウザーで読み込むことができず、古いウェブページは再生できなくなった。我々は9・11の恐ろしい出来事を目の当たりにし、報道機関があの悲劇の日のことを描写し、伝える上でフラッシュが果たした重要な役割を認識している」とコメントした。

韓国サムスン傘下のソフトウェア「ハーマン」もアドビと組んで、フラッシュを使ったコンテンツの保全を支援している。

中には自らフラッシュのコンテンツを復活させた報道機関もある。USAトゥデー紙は、9・11から1年後の記事の一部を再公開し、フラッシュを使った双方向コンテンツもその中に含めた。

ニューヨーク・タイムズ紙は、ラッフルを使って古いフラッシュの双方向コンテンツを復元した。「いずれはフラッシュの双方向コンテンツ全てを読者に経験してもらえるようにしたい」としている。

ただ、全てのメディア企業が過去のコンテンツをそれほど重視しているわけではない。「ニュース会社はまさにこの瞬間と明日のビジネスを展開している」「我々は図書館ではない」とパチェコ教授は指摘した。

米同時多発テロから20年、当時の報道の様子は

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