(CNN) 犬の骨を思わせる形状で知られる小惑星について、これまでで最も詳細な画像を天文学者らがこのほど分析した。周囲に存在する2つの衛星を含め、新たな知見を得る一助になるとみられている。
当該の小惑星は「216クレオパトラ」と呼ばれ、地球からは最接近時でも2億キロ離れている。南米チリの天文台にある超大型望遠鏡VLTで撮影した今回の鮮明な画像が、その質量や立体的な形状の分析に一役買った。
9日刊行の天文学会誌には関連する2本の論文が掲載された。1本は小惑星の形状に注目し、もう1本は小惑星の質量と2つの衛星についてより掘り下げた内容となっている。
小惑星の3次元形状分析に関する論文の筆頭著者を務めたフランク・マーキス氏は声明を出し、「クレオパトラは太陽系の中で実にユニークな天体だ」「科学は一風変わった例外的な事象を研究することで大きな進展を遂げる。クレオパトラはそうしたものの一つであり、この複雑かつ複合的な小惑星系を理解できれば、それは我々の太陽系についての知見を広げることにも寄与すると思う」と述べた。
クレオパトラは火星と木星の間にある小惑星帯にあり、太陽の周りを回っている。20年前にレーダーで観測され、その形状が明らかになった。丸みを帯びた2つの突起が、分厚い首状の部分でつながっているように見える。
マーキス氏らのチームは2008年にクレオパトラを周回する衛星2つを発見した。これらは古代エジプトの女王クレオパトラの息子にちなんでそれぞれアレックスヘリオス、クレオセレネと名付けられた。
クレオパトラ(写真中央)を周回する衛星アレックスヘリオスとクレオセレネ(写真端の白い点)/ESO/Vernazza, Marchis et al./MISTRAL algorithm (ONERA/CNRS)
VLTが17~19年にかけて撮影した画像により、天文学者らはクレオパトラと衛星を異なる角度から観測し、立体的な形状をより正確に把握することが可能になった。クレオパトラの2つの突起のうち、1つはもう1つより大きいことも分かった。全体の長さは約269キロで、英仏海峡の半分に相当する。
またクレオパトラの質量を改めて計算したところ、従来の数値より35%小さかったという。最新の研究により、クレオパトラの重力が衛星の動きにどの程度影響を及ぼしているかも明らかになった。
クレオパトラの密度は鉄の半分以下。このため、構成要素に金属を含む公算は大きいものの、おそらくは岩塊の集積により形成された多孔質のラブルパイル小惑星だとみられる。
2つの衛星は、過去の衝突などでクレオパトラから削り取られた岩塊で形成されていると考えられる。クレオパトラは非常に高速で回転しているため、ごく小さな物体が衝突しても小惑星を構成する物質が表面から削り取られる可能性があるという。