(CNN) ヤモリの足は自然界において、間違いなく金メダル級の機能を持つ。小さな剛毛で覆われ、吸着性を備える足先によって天井すらも駆け回ることができる。
だが、ヤモリの尾も足と同じくらい並外れたものであり、ヤモリが素晴らしく巧みに尾を操って、安定した着地や、木の幹のような垂直面での矢のような走りを実現していることを明らかにした研究論文が、2日付の英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ・バイオロジーに発表された。
ドイツにあるマックスプランク・インテリジェントシステム研究所の研究者であるアルディアン・ジュスフィ氏は、「ワシが枝に止まる場合、翼を使って速度を落とし、速度がほとんどゼロになってから降り立つ。これは数多くの制御を必要とする、優美な着地だ。ヤモリはその正反対だ」と説明した。
木に飛びついた後で体を休めるヤモリ/Ardian Jusufi
同氏および自身が率いるチームは当初、ヤモリは体を安定させて滑空し、比較的制御された状態で木の幹へ降着することが出来ると考えた。初期の実験では、風洞の中でスカイダイビングをするように、ヤモリが空中でバランスを取るために尾を使うことが示されていた。
だが高速度ビデオカメラでヤモリを捉え、さらにヤモリをモデルとしたロボットを組み立ててみたところ、ヤモリは驚いたことに、最大時速21キロの速度で頭から木の幹にぶつかり、衝撃のエネルギーを吸収するために尾を使って降着を安定させていたにすぎないことが分かった。
ジュスフィ氏は、「ヤモリは非常に速いスピードで樹木に接近し、まず前足と頭部、そして胴部の一部を用いて降着する。その後、後ろ足が降着すると、掛かる力が非常に大きいため、胴部が頭部を放り上げてのけぞる形となる。その間に尾が樹木に押し付けられる」と説明。
一連の動作の間にヤモリに対して掛かる力をより理解するため、研究チームはヤモリを念頭に置いたロボット2機を3Dプリンターで制作。ソフトプラスチックとゴム状の物質で製造された2機のロボットの一方には尾があり、もう一方にはない形とした。
そうして研究者らは、降着の衝撃を計測する床反力計に向けてロボットを放出した。すると尾を持つロボットだけが装置の表面に吸着。高速で木の幹に衝突したヤモリの体を安定させるために尾が必要不可欠だとする研究者らの観察結果を立証することとなった。
ジュスフィ氏は、今回の研究結果がロボットをさらに洗練させる助力となり得ると指摘。「これは飛行するロボットが壁面に降着したり、建設作業やメンテナンス作業、調査や救助活動に用いられたりするための方策に新たな選択肢を与えてくれるものだ」と話した。