最後の米軍機がアフガン発つ、米国の最長の戦いに終幕

8月30日、カブールの空港を飛び立つ米空軍機/AAMIR QURESHI/AFP/Getty Images

2021.08.31 Tue posted at 13:10 JST

(CNN) 米中央軍のマッケンジー司令官は30日、国防総省での記者会見で、最後の米軍機がアフガニスタンを離れたと発表した。米軍の撤退は、米国の最も長かった戦いが緊迫と混乱、流血をはらんで終幕を迎えたことを意味する。

マッケンジー氏は「アフガニスタンからの我々の撤退完了と米国市民、第三国の国民、攻撃を受けやすいアフガニスタン人の退避作戦の終了をここに宣言する。最後のC―17輸送機がハミド・カルザイ国際空港を米東部時間30日午後3時29分(日本時間31日午前4時29分)に離陸した」と述べた。

撤退に際しては「多くの心痛める出来事があった」と述べ、「我々が脱出させたかった全員を脱出させられなかった」とも語った。

バイデン米大統領は同日の声明で、アフガニスタンに最後まで駐留した米軍が「予定通りアフガニスタンからの危険な撤退を実行した」として感謝の言葉を伝えた。

「この17日間で軍は米国史上最大の空輸を実行し、12万人以上の米市民、同盟国の市民、アフガニスタン人の協力者を退避させた。比類ない勇気とプロ意識、決意でこれを実行した」と述べた。31日にはアフガニスタンに関する演説を国民に向けて行う予定。

「今、我々の20年に及ぶアフガニスタンでの駐留は終了した」とも発言した。

国防総省のカービー報道官によると、7月以降、30日時点でハミド・カルザイ国際空港から空路退避した人数は12万2000人を超える。

マッケンジー氏によると、今月14日以降は米軍特殊部隊が展開して、1064人の米国市民と2017人の危険の迫るアフガニスタン人や特別移民ビザ(SIV)申請者の出国に向けた活動を行った。同氏は「6000人以上の米国市民を退避させた。現時点で出国を望む人々の大部分に当たると考えている」と述べた。

カブールを発った最後の5便には米国市民は乗っていなかった。空港に取り残された避難民もいないという。最後に出国便に搭乗したのはクリストファー・ドノヒュー大将とロス・ウィルソン駐アフガニスタン代理大使だった。

米国の外交官は誰もアフガニスタンに残っていない。国務省高官は、在カブール米大使館は活動を停止する予定だが、国内に残る米国市民やアフガニスタン人への働きかけが止まるわけではないと述べた。

空港の再開

ブリンケン国務長官は30日、アフガニスタンでの米国の活動は終わっておらず、バイデン政権が米国人や米国の永住者、アフガニスタン人の出国を助ける働きかけは続くと述べた。

ブリンケン氏によると、米国はアフガニスタンの外交機能をカタールのドーハに移す予定。

米国人やアフガニスタン人を出国させる取り組みの一環で、カブール空港をできるだけ早く再開させる方法の議論が同盟国の間で進んでいる。これが実現すれば、米国人やアフガニスタン人を安全に出国させるのが容易になる。

ブリンケン氏は30日朝に他国の外相とのバーチャル会議を開き、協力の方法を議論していると明らかにした。「特にカタールとトルコの取り組みには非常に感謝している。これで日々、少数のチャーター便(の運航)が可能になるだろう。アフガニスタンを出国したい人々にとってこうした便は重要になる」と語った。

アフガンからの米軍撤退の完了を宣言する米中央軍のマッケンジー司令官

20年近い年月

30日の撤退により、この20年近い年月で初めてアフガニスタンから米軍がいなくなった。2兆ドルが支出され、約2000人の米兵が死亡した。今回の撤退は戦争の有用性への疑問も投げかける。戦争には親子2代で参加した人々もいる。

20年近く前、米国は2001年9月11日の米同時多発テロの報復でアフガニスタンに進攻し、国際テロ組織アルカイダとタリバン政権を攻撃した。そして、そのときとは別の米政権は今、アルカイダや他のテロ組織と緊密な関係をいまだに維持するタリバンが支配する同国を去ろうとしている。

アフガニスタンは今後、バイデン氏に政治的な影を落とし、軍事面でも関与が続くだろう。ホワイトハウス関係者は、カブール空港で起きた米兵13人の死亡した爆発事件について、バイデン氏が報復に手段を選ぶなと軍幹部に命じたと述べ、テロリストの追跡を続ける大統領の意向を明らかにした。

アフガニスタンに残る米国人も政権の新たな責任となるだろう。国務省高官によると、出国を望むもののアフガニスタンに残留している米国人は250人未満と見られている。

この当局者は「まだ少数の人が残っていると思う。正確な人数を把握しようと努めている」「出国者の名簿を精査し、電話やテキストメッセージ、ワッツアップ、電子メールで我々のリストに当たっている」と述べた。

統合参謀部のハンク・テイラー地域作戦担当副部長(大将)によると、30日午前までの24時間でC―17輸送機26機が1200人の避難民を乗せてカブールを離れた。カブール空港を出発した機体は全部で28機だという。

同じ時間帯には、米軍の無人機攻撃で子どもを含む複数の市民が死亡し、カブール空港がロケット砲で狙われた。軍関係者は退避作戦に向けられた進行中の具体的な脅威があるとして警告を続けた。

継続する脅威

30日朝の時点で、カービー報道官は空港への攻撃の可能性を問われると、継続する脅威は「現実的で進行中であり、多くの場合で具体的」だと述べた。テイラー氏は、軍の活動はカブールにいる米軍の安全確保に引き続き注力し、最後の最後までアフガニスタン人を退避させる能力はあると述べた。

軍事的な撤退とともに、米国のすべての外交代表も引き揚げた。米国が今後、タリバンを公式にアフガニスタンの統治者として認めるかどうかは、依然答えの出ていない問題だ。

国務省当局者によると、アフガニスタン国内には米国人が残っている。そのうち一部は出国を望んでおらず、または実際には既に出国している可能性のある人もいるという。さらに、米軍に協力し、タリバンから報復される危機に直面するアフガニスタン人も残留している。

悲惨にも終えることのできなかったこの取り組みは、任期1年目の後半を迎えるバイデン政権にとって、より大きな政治的課題となるとみられる。米南部にハリケーンが来襲し、新型コロナウイルスの再流行が勢いを増す中、アフガニスタン撤退の説明を要求されることになる。

人々の空輸作戦は偶発的に急ごしらえの取り組みとして始まったように見える。先週には13人の兵士が死亡した爆発事件があった。米軍や米外交官に協力したアフガニスタン人通訳者で出国できなかった人々には死刑宣告の危険が迫っている。さらに、アフガニスタン発のテロの脅威に実際に対応が行われているのかどうか、及びその方法に関する疑念は、バイデン氏の撤退という決断に影を投げかけている。

バイデン氏は既に、一部の分野でアフガニスタンへの米国の関与を延長する姿勢を示している。ホワイトハウスのサキ報道官も、「米兵の死への代償を過激派組織イラク・シリア・イスラム国(ISIS)に負わせるのに手段を選ぶべきではないと軍幹部に明確に示した」と述べた。

空港へ向かっていた自動車爆弾と見られる車両を狙った、米軍による29日の無人機攻撃では、子ども6人を含む1家族9人が亡くなった。犠牲者の親族がCNNと働く地元記者にそう伝えた。中央軍は市民の犠牲者が出た可能性を評価中だとしている。

米軍駐留が終わりに近づく中、ブリンケン氏は各国の閣僚級の会合を主催し、アフガニスタンに駐留する同盟国や他の同盟国とバーチャル会議を開いた。

ニューヨークでは国連安全保障理事会が開かれ、カブール空港からアフガニスタンを出国する人々の「安全な通行」を求める決議を採択した。当局者によると、安保理はアフガニスタン人や外国人の安全な脱出をタリバンに依存する形となっている。

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