イタリアの中古住宅を格安で購入、英国人男性が味わった苦労と喜び

伊北部の山村にある古い民家を格安で購入した英国人男性。そこで暮らす苦労と喜びとは/Valentina Bozzini

2021.08.28 Sat posted at 18:20 JST

(CNN) イタリアには掘り出し物の安価な中古住宅が数多く存在し、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)の最中にもかかわらず、多くの住宅購入希望者の関心を集めている。では、意を決して遠隔の町の今にも崩れそうな一角に大金(小金)を投じると果たしてどうなるのか。

車とオートバイをこよなく愛する英国人、ロイ・パトリック氏(67)は、イタリア北部の山村カッレーガ・リーグレにある、かつて校舎だった古い民家を約1万6500ドル(約180万円)で購入した。パトリック氏にとって、この家での生活は一種の冒険であり、煙突が崩れたり、ドアが開かないなどのトラブルには見舞われたが、喜びも味わった。

オックスフォード出身のパトリック氏がこの物件を購入したのは、ほとんど偶然だった。

パトリック氏は、離婚後に参加した地中海クルーズを終え、ジェノバ港に上陸した際に現地の人々からカッレーガ・リーグレの素晴らしさについて聞かされた。そして実際に村を訪問し、見て回ろうと決意したパトリック氏は、その村の素晴らしさに魅了された。

現地の古い物件を数件見て回った結果、1930年代に建てられた校舎に心を奪われ、2017年に購入した。この家は、コニオという住民がわずか12人しかいない静かな地区にある。

家を購入して以来、パトリック氏はパンデミックの間も2週間に1度カッレーガを訪れている。イタリアで三輪自動車を売買する事業を営むパトリック氏は、この村で新しい家族と、新鮮な空気の中でデトックスをしたり、テクノロジーのない生活が送れる田舎の安息の地を見つけたと言う。

当該の民家はかつて校舎として使用されていた

煙突の倒壊

購入した家のある構造上のトラブルが心温まる話に発展した。ある年のクリスマスイブに、不安定だった煙突が大雪によって倒壊した時、隣人の1人が屋根に上がって補修してくれた。パトリック氏は、その隣人が報酬を受け取らなかったことに驚いたという。

村の人々は、新しい住民を歓迎し、助けたいと思っており、見返りは望んでいないとパトリック氏は言う。せいぜい1杯の赤ワインをいっしょに飲むくらいだ。

パトリック氏はすでに、村に多くの友人がおり、彼らとイタリアの夕食を楽しんでいるという。

またある時、この古い校舎を住める状態にするために必要な最低限のリフォームを行っている最中に、パトリック氏は年代物の宝の山を発見した。

パトリック氏が屋根裏で発見したのは、その家が学校だった時代の記念品だった。高く積まれたほこりまみれの教科書、インク入れ、ガラス瓶、児童名簿など、現在パトリック氏がリビングとして使用している部屋で20人の児童が授業を受けていた時代の品々が数多く残されていた。

また玄関先には、その校舎が建てられた年を示すローマ数字のモザイクがある。パトリック氏は、校舎のタイル張りの床と木で覆われた壁はそのまま使用することにした。

平穏な生活

この村で住宅を購入したいと考えている人へのパトリック氏からのアドバイスは、社会的興奮は期待しないこと、そして、厄介なでこぼこ道への心構えをしておくこと、の2点だ。

村には何もなく、あるのは素晴らしい景色、静寂、きれいな空気、手付かずの環境だけだ、とパトリック氏は言う。バー、スーパーマーケット、店舗、レストランはなく、移動手段として車が必須だ。

パトリック氏が購入した2階建ての校舎には厚い石の壁と高い天井があり、冬に2週間家を空けると家の中が冷え切って、暖めるのに時間がかかるという。また雪が積もると、ドアまでの道の雪かきも重労働だ。

パトリック氏は、配管や暖房設備のアップグレード、配線のし直しなど、校舎の修繕をすべて自分でこなした。

「恐ろしい」状態だった当初のキッチンは処分し、新たな家具を入れて大改装を施した

「恐ろしい」キッチン

パトリック氏がこの家を購入した時、備え付けの家具や設備がいくつかあったが、パトリック氏は、閉校後にそこに住んでいた家族が使用していた「ぞっとするほど恐ろしい」キチネット(簡易キッチン)は処分した。家具については、地元のフリーマーケットを回り、珍しい家具がないか常に目を光らせていたという。

また内壁を覆うマツ材のパネルに対しては、愛憎の念が入り混じっているという。当初は取り外したい衝動に駆られたが、パネルの状態が良く、暖かい雰囲気を醸し出しているため、そのまま付けておくことにした。

修繕をしていない時は、料理をしたり、音楽を聴いているという。パトリック氏の家の窓から音楽が流れてくると、隣人はパトリック氏が町に戻ってきたことに気付き、パーティーが始まる。

この建物は老朽化しておらず、状態は非常に良かったため、修繕費は安く抑えられたが、ここまでの道のりは決して平坦ではなかった。

家の外壁の修繕や塗装のために足場を組む必要があったが、それがかなり「危険な作業」だったという。またバスルームにはトイレしかなかったため、新たにシャワーを取り付ける必要があった。

パトリック氏は「次々と発生する問題に対処しなければならなかった」とし、「英国では必要な道具や材料がどこに売っているか分かっているが、カッレーガでは全く分からない。そこで、作業を始める前にどこに行き、どの店や人を探すべきかを調べる必要がある。計画作りが重要だ」と付け加えた。

またカッレーガは、イタリアの多くの美しい場所と同様に地震が発生しやすい地域にあるため、家に保険をかけるのにも苦労したという。

カッレーガで家の購入を検討している人にパトリック氏が最も伝えたいアドバイスは、家を購入する前に慎重に検討するということだ。

カッレーガには店がないため、食料はカベラという近くの村に買いに行かなくてはならない。カッレーガからカベラまでの距離はおよそ16キロだが、途中にU字型のカーブがいくつもあるため、車で30分以上かかる。

「狭い山道のドライブはとても快適とは言えない。特に道が新雪で覆われている時は恐怖でぞっとする」(パトリック氏)

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