(CNN) イタリア・ローマのピザといえば、2000年以上も存続する建物の建築と並ぶ芸術であり、世界の一大宗教を導く存在でもある。
特にローマ中心部からテベレ川をはさんで対岸に位置するトラステベレは、世界有数のピザの名所とされてきた。
そんなローマに新しく、ピザの自販機「ミスター・ゴー」が登場した。
4種類のピザを販売する「ミスター・ゴー」は、普通のピザ店のように1週間に1回休んだり、午後の休みを取ったりはしない。金属の「手」が24時間年中無休で生地をこねて伸ばし、トッピングを載せてクリスピーなピザを焼き上げる。
ピザの自販機はローマ在住の起業家マッシモ・ブコロ氏が考案した。「この市場には抜け穴があった。ローマは重要な都市でありながら、夜間は(食べる物が)何もない」とブコロ氏は言い、「昔ながらのピザ店と競争するつもりはなかった」と付け加えた。
実際のところ、これは本物のピザではなく、「ピザとピアディナの中間」に位置すると同氏は言う。ピアディナは、生地を薄く伸ばしたエミリアロマーニャ地方の料理。
そこでCNN記者が実際に試してみることにした。
ミスター・ゴーはローマ市内の住宅地にある。コロッセオやパンテオン神殿からは車で約15分、テルミニ駅からは7分。病院や学生街も近く、夜通し人通りがある。
記者を乗せたタクシーの運転手は、行き先を告げると「あれならテレビで見たよ!」と興奮した様子で、家族からかかってきた電話にも、外国人をピザの自販機に連れて行くところだと吹聴した。
ただし好意的な意味での興奮ではなかった。運転手は、ピザ自販機を嫌悪すべき、恥ずべきものだと固く信じ、記者の行動について自分の家族に「この人は仕事のためにやらなければいけないんだ」と言い訳していた。
ミスター・ゴーは人通りの多い交差点にあり、ポップ音楽が流れていた(ブコロ氏によれば、3分間の待ち時間を楽しんでもらうためだという)。
本体は汚れ1つなくピカピカだった。ブコロ氏によると、内部も2~3日ごとに解体して洗浄・消毒を行っているという。手順はイタリア語と英語で説明が書かれていた。
ピザは「クラシック・マルガリータ」「クアトロフォルマッジ(4種類のチーズ)」「スパイシーサラミ」「パンチェッタ(ベーコンの1種)」の4種類。記者がクアトロフォルマッジ(6ユーロ=約770円)を選ぶと、自販機が動き始めた。
記者の目の前で、水と小麦粉が混ぜられて円盤状の生地が出来上がり、トマトピューレとトッピングが載せられて、最後に小さなオーブンで焼き上げられた。その工程は最初から最後まで衛生的に見え、ピザは驚くほどおいしそうに見えた。
タクシー運転手は1切れ食べたいと所望し、生地はどちらかといえばピアディナのようだと感想をもらしたものの、嫌悪しているようには見えなかった。実際のところ、思ったよりおいしいと言いたいのをこらえているように見えた。ただし値段は高いと不満げで、トラステベレに行けば同じ値段で本格マルガリータが食べられると主張。「ピザはピザ職人が作るべきだ」というのが運転手の最終判断だった。
記者の印象は、運転手ほどは悪くなかった。これで次にサッカー観戦後に必要を感じた場合、どこへ行けばいいのかが分かった。