(CNN) ブラジルの警察当局による家宅捜索で発見された化石が、翼竜のものとしては最も完全な標本だったとする研究結果が25日、米科学誌「プロスワン」で発表された。この化石が、約1億4500万年~約1億50万年前の白亜紀初期において大空を飛翔(ひしょう)した翼竜について、新たな知見をもたらした。
この翼竜は頭部に巨大なとさかを持つことで知られ、ブラジル国内では頻繁に化石が見つかるものの、たいていの場合は骨格の一部のみだった。
新たに発見された化石は、トゥパンダクティルス・ナビガンスと呼ばれる翼竜類のもので、軟組織の一部を含むほぼ全身の骨格が残されていた。
また、サンパウロのサントス港で2013年に実施された警察の捜査で押収されたもので、石灰岩の石板6枚にまたがっている。
サンパウロ大学に所属する古脊椎(せきつい)動物学者で、論文の執筆者であるビクトル・ベッカリ氏は、「ブラジル連邦警察が化石取引の事業について捜査し、13年に3000件超の標本を回収した」と説明。
「ブラジルでは化石が地質学的な遺産を成すとして、法律によって保護されている。それゆえ、化石の収集には許可が必要であり、化石の取引および私的な収集は違法となる」と話した。
同大学に石板が移送された後、研究者らは化石を把握するためにパズルのように組み合わせ、岩石の内部にある骨格を見つけるべくCTスキャンを実施。
今回の発見は研究者らにとって、トゥパンダクティルス・ナビガンスの頭部だけにとどまらず、完全に近い骨格を調査する初めての機会となった。
同僚らと16年に化石の研究を開始したベッカリ氏は、「標本の保存状態は並外れて素晴らしく、骨格の90%超、および頭部にあるとさかの軟組織の型、そしてケラチン質のくちばしが備わっている」と語った。
骨格の化石は、同国北東部に位置し、豊富な化石が産出されるクラト層で発掘され、約1億1500万年前にさかのぼるものだという。
この翼竜は長い首を持っており、ほとんどの時間を種子や果実といった餌を探し回りながら地上で過ごしていたと、研究者らは考えている。
ベッカリ氏は「この翼竜は翼幅が2.5メートル超で、体高は1メートル(そのうち、とさかが40%を占める)」と説明。「とさかがこれほど高く突き出て、さらに首も比較的長いことから、飛ぶ際には短い距離に限られていた可能性がある」と指摘した。
だがこの翼竜には、翼の動きが生み出す力に対抗して胸部を支える手助けをする背心骨など、飛翔するために必要な適応が備わっていた。また研究者らによると、翼骨の部位に固着する筋肉を発達させていたという。
ベッカリ氏は、「骨格には飛翔のためのあらゆる適応が示されており、この翼竜は捕食者から素早く逃げおおせていた可能性がある」と述べている。