水中でダイバーを「襲う」ウミヘビ、実は求愛の相手と勘違い?

猛毒をもつオリーブウミヘビ。人間に近づくのは交尾の相手と間違えているから?/Jack Breedon

2021.08.26 Thu posted at 11:40 JST

(CNN) 猛毒をもつウミヘビが海中でスキューバダイバーを「襲う」のは、メスと間違えて求愛行動をしているのかもしれない――。そんな研究論文が英科学誌サイエンティフィック・リポーツに発表された。

ダイバーがウミヘビに追いかけられたりかまれたりしたという報告は時折あるものの、これまで理由は分かっていなかった。

しかし研究チームによると、オスのウミヘビはダイバーをライバルまたは交尾の相手と認識し、メスのウミヘビは隠れ場所と認識している可能性があるという。

この研究は、論文共著者のティム・リンチ氏がオーストラリアのグレートバリアリーフで1994~95年にかけて収集したオリーブウミヘビとの遭遇に関するデータを利用した。

ウミヘビは158回の遭遇のうち74回でリンチ氏に近づいていた。特に5~8月の繁殖シーズンに接近が多かった。

論文共著者でマッコーリー大学教授のリック・シャイン氏によると、繁殖期のオスはメスを見つけるとすぐ求愛行動に出る。メスの体を舌ではじいて皮膚の化学物質をチェックし、相手の種類や性別を確認しているという。

「続いてメスに身体を巻き付けるなどして交尾できる態勢を整える」「しかしメスが関心を示さずに、逃げてサンゴの中に隠れてしまうこともある」(シャイン氏)

特に繁殖シーズンは、オスの方がメスよりもダイバーに近づいてくることが多いという。

ダイバーが舌ではじかれることも何度かあり、13回はダイバーが襲いかかられていた。オスがダイバーに襲いかかるのは、メスに逃げられた直後か、ライバルのオスに遭遇した後だった。

一方、メスがダイバーに襲いかかる行動は、オスに追いかけられた後、またはダイバーと交流していてその姿が見えなくなった後に観察された。

オリーブウミヘビは特定のサンゴ礁域に数多く生息する

ダイバーのフィンにオスのウミヘビが巻き付いたことも3回あった。これは通常、求愛の際に見られる行動だという。

「こうしたパターンは、ウミヘビの人間に対する『攻撃』が、性的交流の最中に相手を間違えた結果だったことをうかがわせる」と研究論文では解説している。

ウミヘビは水中で形状を識別するのが難しい可能性もある。

「犬と同じように、ヘビは視覚ではなく大部分を嗅覚に頼って自分の周りの状況を識別する」とシャイン氏は言い、ウミヘビは舌先で感じ取ったにおいを口内の特殊な器官を使って分析していると解説する。

ただ、人間が大型のウミヘビに襲われれば死に至ることもあり、「パニックは命取りだ」とシャイン氏は言う。

ダイバーはじっと動かず、ヘビが舌で自分をチェックするままにさせておく必要がある。

「冷静さを保つことが重要だ。ヘビはダイバーを攻撃しているわけではない」「ただメスのヘビかもしれないと思っているだけだ。そうでないと分かればオスは別の所へ恋の相手を求めて去っていく」とシャイン氏は話している。

この研究論文は19日に発表された。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。