キリンは誤解されてきた? おばあさんが活躍する複雑な社会性が明らかに 新研究

雌のキリンはグループ内の子どもが死んだ際、自分の子どもではなくても悲しむ様子を見せる/Zoe Muller

2021.08.06 Fri posted at 15:00 JST

(CNN) クレーンのような長い首を持つキリンは、世界で最も愛され、そして有名な動物の一つだが、その大きな背丈にもかかわらず、驚くほど込み入った社会性が長年ベールに包まれていたとする研究論文が、3日付の専門誌「マーマル・レビュー」に掲載された。

かつてキリンは、餌を食べて立派な体格を支えることにもっぱら専念するつつましい動物と考えられていた。1991年に出版されたある本では「孤高で、仲間たちとも長期間にわたって交際することはせず、非常に素っ気ない態度でしか付き合わない」と評されている。

だがブリストル大学による新たな研究では、キリンたちはこれまで誤解されてきたとし、実は非常に複雑で社交的な種であることが示唆されている。

同大学生命科学部の生物学者で、今回の論文の執筆者であるゾーイ・ミュラー氏は、「私が最も驚いているのは、キリンが複雑な社会システムを持つと認識するのに2021年までかかったということだ。ゾウや霊長類、クジラのような複雑な社会性を持つ他の哺乳類については、数十年も前から分かっていたが、キリンのようなカリスマ的で知名度の高い種が最近まで本当に研究不足だったということは、不可解に思える」と語っている。

404ページにわたる論文で研究者らは、キリンが母系制を構築しているらしいことを発見したと説明。

研究によると、雌のキリンは他の雌や子どもたちと長期間にわたる関係を維持していることが分かった。雌たちと子どもたちの間には緊密な結束があり、子どもたちは時折、保育所のように他の雌たちから世話を受ける。また雌たちはグループ内の子どもが死んだ際、自分の子どもではない場合でも悲嘆にくれる様子を示すという。だが一方で、雄のキリンたちが一貫して親交を持つのは自分たちの母親だけだ。

「おばあさん効果」

だが、今回の研究でおそらく最も重要なのは、一部の動物たちは、孫が確実に健康に育つよう、生殖期間をかなり過ぎても生き延びるという「おばあさん仮説」が、キリンにも当てはまる可能性があるということだ。

雌のキリンは他の雌や子どもたちと長期間にわたる関係を維持する

この生態は、シャチやゾウ、そしてもちろん人間など、ごく少数の種でしか目にすることが出来ない。

研究者らは、雌のキリンたちが生存期間の最大約30%を「生殖期間後」の状態で過ごすことを発見。ゾウの場合は23%、シャチは35%であることに引けを取らない。

ミュラー氏は電子メールでの取材で、「私が提唱しているのは、キリンの『おばあさんたち』はおそらく、関係を持つグループのメンバーの生存に重要な役割を果たしているということだ。おばあさんはグループのためになる知識を蓄えているほか、育児や子どもの共同養育において重要な役割を果たしている可能性が高い」と指摘している。

また同氏は、30年近く生きるという年長の雌のキリンがコミュニティー内で果たす役割について、また子孫が生き残るためにどういった利点をもたらすのかについて理解するにはさらなる研究が必要と述べている。またどうやってコミュニケーションを取るのか、雄のキリンは生殖期間を超えても生き延びるのか、集団生活がもたらす利点は何かなど、数多くのことについて科学者たちは今も分からないままだという。

同氏は声明で、「今後はキリンが知的で集団生活をする哺乳類だと捉えられるように、今回の論文が一線を引くものとなることを期待する。彼らは非常に成功した複雑な社会を発達させ、それが捕食動物が満ち満ちた厳しい生態系の中で生き残ることを手助けしてきた」と述べた。

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