(CNN) 東京オリンピック(五輪)の陸上女子砲丸投げで銀メダルを獲得した後、表彰台で両手を交差させたレーベン・ソーンダーズ選手(25=米)。同選手がNBCテレビの取材に応じ、このジェスチャーに込めた意味を説明した。
ソーンダーズ選手は他のメダル獲得者と一緒に写真撮影に臨んだ際、両手を上げ「X」の形に交差させた。その意味について同選手は「抑圧されたすべての人が出会う交差地点」を表していると語る。
黒人でLGBTQ(性的少数者)でもあるソーンダーズ選手は7月31日、19メートル79の記録で競技を終え、自身初となる五輪のメダルを手にした。
金メダルは中国の鞏立コウ選手、銅メダルはニュージーランドのバレリー・アダムズ選手が獲得している。
ソーンダーズ選手はメダル獲得後、自分のような人たちのお手本になりたいと話した。
自身の目標は「これまで常に目指してきた自分になること、自分らしく振る舞い、それについて謝らずに済むようになること」だとソーンダーズ選手は説明。若い世代に対しても「周りが何を言おうと、どれだけ型にはめようとしてきても、あなたはあなたでいられること」を示したいと語る。
「人々は私にタトゥーやピアスをしてはいけないと言うが、今の私を見てほしい。いけてるでしょ」(ソーンダーズ選手)
一方、国際オリンピック委員会(IOC)は、ソーンダーズ選手が表彰台で見せたジェスチャーについて調査中だと明らかにした。今回の行動はメダル表彰台での抗議を禁じた規則に違反している可能性がある。
IOCのマーク・アダムス広報部長は8月2日、「米国オリンピック・パラリンピック委員会や世界陸連と連絡を取っている」「今後の対応については、事態を完全に把握するまで話したくない」などと説明。
そのうえで「我々はすべてのアスリートの見解を尊重しようと努めている。彼らには意見表明の場を以前より多く与えている」と述べ、記者会見やSNS、ミックスゾーンに言及した。
一方で、「ただ、我々がひとつ着目しているのは、アスリート3500人を対象に調査したところ、回答者全員が競技の場を守りたいと答えたことだ。誰もがアスリートの見解を尊重できれば素晴らしいことだろう」とも指摘した。
ソーンダーズ選手はツイッターで今回のジェスチャーに関するコメントに返信し、「メダルを剥(はく)奪しようとしてみればいい。私は泳げないが、走って国境を越えるつもりだ」つづっている。
「戦い続ける、攻めの姿勢を貫く、自分の中に価値を発見し続ける」
目を引くマスクやメダル獲得後に見せたポーズが話題を集め、ソーンダーズ選手は東京五輪で一躍時の人となっている。
ただ、過去には個人的な試練に直面したこともあった。
2016年のリオデジャネイロ五輪から東京五輪までの間、ソーンダーズ選手は困難を抱え、うつや自殺願望に苦しんでいた。CNNとの今年のインタビューでは、当時は「限界を超えていた」と語り、セラピーや服薬、近い友人とのやり取りが助けになったと振り返った。
今度は自分以外の心の問題を抱える人が必要な支援を受けられるよう、勇気づけたい考えだ。
「戦い続けること、攻めの姿勢を貫くこと、自分自身や自分のすべての行動に価値を見いだし続けること。それが私のメッセージだ」。ソーンダーズ選手は銀メダル獲得後にそう語った。
「私は本当に多くの人を代表しているので、銀メダル獲得には大きな意味がある。私のことを尊敬してメッセージを寄せ、祈ってくれる人がたくさんいることは分かっている」「自分だけでなく、その人たちにもお返しできてうれしい」(ソーンダーズ選手)