ポーランド、亡命希望のベラルーシ五輪選手に人道ビザ発給 夫も隣国に出国

亡命希望のベラルーシの五輪選手に、ポーランドが人道目的のビザを発給した/Issei Kato/Reuters

2021.08.03 Tue posted at 10:30 JST

(CNN) 東京オリンピック(五輪)のベラルーシ代表、クリスチナ・チマノウスカヤ選手が同国代表チームから帰国を強制され、自国で投獄の恐れがあると訴えて亡命を求めていた件で、隣国ポーランドが2日、人道目的の査証(ビザ)を発給した。

ポーランドの外務次官はツイッターで「ポーランドは彼女のスポーツキャリアの継続に必要なことをすべて行う。いつでも連帯を支持する」と述べた。

ロイター通信によると、チマノウスカヤ選手はポーランド大使館に入っていく姿が見かけられた。

チマノウスカヤ選手は2日の陸上女子200メートルへの出場を予定していた。だが、1600メートルリレーに自分の同意なくエントリーされたとベラルーシのスポーツ当局を批判したところ、代表チームから強制的に帰国を命じられていた。同国のスポーツメディアに対して、この距離を走った経験はなく、リレーへの参加決定に怒りを覚えると語っている。

ベラルーシ・スポーツ連帯財団のアナトール・コタウ氏によると、チーム関係者が1日午後、帰国が決まったので荷物をまとめるように伝えにきたという。同財団はベラルーシ当局の抑圧を受けた選手を代表する機関で、コタウ氏はチマノウスカヤ選手と直接連絡を取っている。

在日ベラルーシ大使館は2日、ベラルーシの外交関係者が事情の説明のため空港に出向き、必要があれば領事上の支援を行うと申し出たとの声明を発表。だが、日本側からチマノウスカヤ選手の情報を得ることはできず、選手個人との連絡も取れていないとしている。

コタウ氏によると、チマノウスカヤ選手は1日午後10時50分発のトルコ・イスタンブール行きの便に搭乗予定だった。空港到着後すぐに警察官に近づき、政治亡命の申請を求めたという。

東京五輪の陸上女子100メートルのレースに参加するチマノウスカヤ選手

ベラルーシの隣国ウクライナ内務省の報道官は2日、チマノウスカヤ選手の夫、アルセニ・ズダネビッチ氏がベラルーシを出国してウクライナに入ったと述べた。

国際オリンピック委員会(IOC)は2日、チマノウスカヤ選手は空港のホテルに一泊した後、日本当局の保護下にあると説明。IOCの広報担当、マーク・アダムズ氏は記者会見で、ベラルーシ・オリンピック委員会に対して状況に関する詳細な説明を書面で求めていると述べた。

アダムズ氏はさらに「今朝、再度彼女と話をして、次のステップや彼女がどうしたいかについて把握し、その決定で彼女を支援していく」と述べた。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)も今回の件に関与しているとも話した。

米国のジュリー・フィッシャー駐ベラルーシ大使は2日、日本とポーランド当局が支援の手を差し伸べたことに感謝の意を示した。ツイッターに「日本とポーランド当局の迅速な行動で、チマノウスカヤ選手がルカシェンコ政権の試みから逃れることができた。同政権はこの東京五輪出場選手の意見表明に対して、選手の信頼をおとしめ、恥をかかせようとした」と書き込んだ。

冷戦時代の主要なスポーツ大会では、ソ連や東欧の共産主義国の選手が亡命する例は多かった。ソ連崩壊後そうした動きは減っているが、今でも亡命申請をする選手はいる。

ベラルーシのルカシェンコ大統領は27年間にわたり政権を維持し、同国のオリンピック委員会の責任者も長年務めた。今年2月に入り長男のビクトル氏が後任に座った。

だがIOCはビクトル氏の就任を認めず、声明でベラルーシ・オリンピック委員会が「ベラルーシの選手を政治的差別から適切に保護していない」と批判した。

IOCは昨年12月、ルカシェンコ大統領とビクトル氏の東京五輪への参加を禁じている。

ベラルーシの野党指導者スベトラーナ・チハノフスカヤ氏は2日、国際社会に対し、チマノウスカヤ選手の安全を確保し、この件の調査をするように求めた。

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