ロンドン(CNN Business) 独自動車メーカーのフォルクスワーゲン(VW)を支配する持ち株会社、ポルシェSEは28日、独新興宇宙企業イーザル・アエロスペースに出資すると明らかにした。ポルシェSEは親戚関係にあるポルシェ家とピエヒ家が支配する企業。
イーザル・アエロスペースは現在、ジェフ・ベゾス氏のブルーオリジンやイーロン・マスク氏のスペースXとロケット生産や衛星打ち上げの分野で対抗することを試みている。
大富豪の支援を受けるブルーオリジンとスペースXはすでに有人宇宙事業に乗り出しているが、イーザル・アエロスペースは、小型衛星の打ち上げ市場で競争することは可能だと見込む。同社は来年に初の試験飛行を予定している。
ポルシェSEは今回、ベンチャーキャピタルのHVキャピタルやスイスの銀行ロンバー・オディエとともに7500万ドル(約82億円)の資金を注入する方針。既存の出資者も参加する1億6500万ドル規模の資金調達ラウンドの一環となる。ポルシェSEによると、同社の株式保有比率は「1桁台の前半」になるという。
新旧の産業の企業がソフトウェア・アプリケーションの運用で衛星技術への依存を強めるなか、小型衛星打ち上げへの商業需要は今後数年で大幅に伸びるとみられている。
スペースXは先月、複数の顧客の衛星88個を1回の打ち上げで軌道投入。同じ日には、リチャード・ブランソン氏率いるヴァージン・ギャラクティックから2017年に独立したヴァージン・オービットも、米国防総省やポーランドの新興企業、オランダ空軍の人工衛星を宇宙に送り込んだ。
イーザル・アエロスペースによると、世界の宇宙打ち上げサービス市場は27年までに354億ドルを超える規模になり、うち3分の1近くの売り上げは小~中型衛星から発生する見通し。
ポルシェSEにとって今回は比較的小規模の取引となるが、同社はこれまで自動車ビジネスへの投資が圧倒的に多かっただけに注目に値する。各種民間企業やそれを支援する富豪の間で繰り広げられている宇宙競争の最新の例といえる。